【読】静かな大地(4)
この池澤夏樹の『静かな大地』を買って初めて読んだのがいつだったのか、過去のメールを探してようやくわかった。 去年の8月の終りだった。
同名の本(花崎皋平=はなざき・こうへい=著、『静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』)とあわせて、北海道に住む親しい友人が教えてくれたのがきっかけだった。
あれから一年あまり、アイヌへの関心は高まり、あれこれ調べたり読んだりした後なので、今回の再読では初回に気づかなかったことがたくさん見えてきた。
池澤夏樹は北海道の帯広生まれ。 父親の福永武彦(作家)が戦争のために一家で疎開していた昭和20年にここで誕生した。 彼は著作のどこかで、この小説が自分の先祖をモデルにしたものだと書いていた。 三郎や志郎や由良が作者とどういう繋がりの人物をモデルにしているのか、興味深いことではあるが、わからない。
それはさておき、今日読んだ章「鹿の道 人の道」には、作者のアイヌに対する理解というか、共感というのか、考え方がはっきり出ている個所がある。
シトナという名の、オシアンクル(五郎)の叔父の仲間という設定の人物に、こう語らせている。 三郎が札幌から郷里に戻り、このシトナの協力で牧場を開くための広大な土地を見つけた時のこと。
<「本当によいところが見つかった。早速にも札幌に行って、開拓使本庁に払い下げの申請をしよう。・・・」
・・・「何を話している」とシトナさんがアイヌの言葉で三郎さんに問われました。
「この土地を私のものとするための算段です」と三郎さんは答えました。・・・
「なぜだ」と重ねてシトナさんは問いました。・・・>
三郎が、北海道の土地はすべて開拓使(という役所)が管轄しているから、そこに申請する必要があると説明する。
<「それを問うているのではない。なぜ、この土地の所属をシサムのヤクショが決めるか、それが知りたいのだ」
シサムという言葉を聞いて、三郎さんと志郎さんははっとしました。・・・
「それは、それは、アイヌモシリは今は北海道となって、日本のものとなったからですよ」・・・
「納得のいかないことだ」とシトナさんは言われました。・・・
「・・・わしらアイヌが祖父の祖父の祖父の頃から走り回っていた土地が、いつから、どういうからくりで、和人のものになったのだ」>
引用ばかりで気が引けるが、ここに示された考え方、北海道という土地がそもそも誰のものだったのか、いいや、誰のものでもなかったのだ、という認識は、とてもラジカル(根源的)なことである。
いや、それは昔のこと、やむを得なかったこと、などという言い訳は通らないと思うのだ。
これは、ぼくら〝和人の子孫〟の罪の意識などとは関係なく、人類の根源的な問題ではないのか。
アメリカ大陸やオーストラリア大陸の歴史を思い出せば、誰にでもわかることではないか。
それをごまかしたり、なかったことにしたり、そんなことはできない。
・・・とまあ、長々と理屈っぽく書いてしまったが、これはたぶんぼくの生涯かけてのテーマなのである。
そうそう、この章のはじめに、イザベラ・バードが登場する。
明治11年の夏、三郎が札幌から静内に帰る途中、平取に泊まっていたイザベラ・バード(『日本奥地紀行』を書いたイギリスの女性旅行家)に会った、という設定である。 この部分は事実にもとづいたエピソードかもしれないし、作者の想像から生まれたフィクションかもしれない。 イザベラ・バードの旅の足跡とは、もちろん一致しているが・・・。
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コメント
数日、インターネットにトラブルがあり失礼しました。回復しましたのでお知らせ・・。なお、私もこの「静かな大地」2冊を読み直すつもりです。
投稿: 玄柊 | 2005年10月27日 (木) 14時34分
丁寧に読んでくださっている方がいると思うと嬉しいです。ありがとう。
長々と、拙い文章がこの先しばらく続くと思いますが、ごかんべんください。
投稿: やまおじさん | 2005年10月27日 (木) 21時22分