【読】静かな大地(6)
桃太郎の話の続き。
「フチの昔話」の章の最後で、由良が夫の長吉に福沢諭吉の一文を読んで聞かせたのにはわけがある。
<「福沢諭吉がそんなことを書いているのか」
「ええ、『ひゞのをしへ』という御本」
「桃太郎は卑劣千万か」 と長吉は考えながら言った。 「言われてみればそのとおりかもしれないな。しかも、自分一人ではできないからと、加勢をつのっている。 黍団子で釣って犬と猿と雉を雇い入れている。 これではまるで、松前藩と場所請負の連中の仲とおなじではないか」
「そういうことになるわねえ」
「だが、ここは和人の国だ。 桃太郎の国だ。 みんなが桃太郎になりたがっている国だ。 ・・・桃太郎の話を鬼の側から読むなど、アイヌと和人の仲に重ねて読むなど、誰もすることではないぞ」>
と、まあ、引用を続けていくと、内容の丸写しになってしまうが・・・。
三児の母親である由良は、鬼の妻の立場に自分を置いて考えてしまう。 そこに、さらにアイヌの人たちの姿も重ね合わせているのである。
<「おまえは桃太郎の妻かもしれない。 故郷で舅や姑とのんびりと暮らして待っていると、夫が宝物を持って帰ってくる。 嬉しいことではないか」
「でも、その宝物は血まみれだわ」・・・>
桃太郎の話はこれぐらいにしておこう。
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コメント
自己レスですが・・・。
太宰治にも似たような視点からお伽ばなしを扱った小説あり。
『お伽草子』という小説に「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」が取りあげられています。
防空壕の中で、五歳の娘にお伽ばなしの絵本を読み聞かせながら、その絵本の物語とは別の物語を胸中に描き出す、という趣向です。
投稿: やまおじさん | 2005年10月29日 (土) 18時07分