【読】静かな大地(10) 最終回
終章 「遠別を去る」
時は下って昭和13年。 由良は伯父・宗形三郎の伝記を書き終える。
三郎も、その妻の雪乃(エカリアン)も、シトナも、とうにいない。
由良の父・志郎も、数年前に亡くなった。 由良は、「宗形三郎伝」を父の遺志を継ぐ気持ちで書き上げたのである。
父の法事のときに、由良は父と伯父の友人だった人物から、伯父・三郎の本心を聞く。
三郎が友人に語った言葉。
<裏切り者なのだよ、私は。 あの時に私は腹を決めたのだ。 もうアイヌの側に立つしかない、半端なことではいけない。 自分は生涯この道をつらぬくのだ、とな。>
<私は遠別で馬を育て、作物を育てる。 それについてはいささか自信がある。 うまくゆけばやりかたを和人にも伝授しようと思っている。 ・・・だが、この遠別ばかりはアイヌのものだ。 ここに和人は入れぬ。>
そうとうな覚悟である。 このような人物が実際にいたのかどうか、誰かモデルがいたのか、作者に聞かないとわからないが(実は知っているが)、そんな穿鑿はともかく、作者の気合いが伝わってくるくだりだ。
最後に、由良の独白が胸を打つ。
<滅びゆく民、という言葉がわたしは嫌いだ。 まるで放っておいたら滅びたかのような言いかた。 滅ぼす者がいるから滅びるのではないか。>
終章の後に、二つの短いエピローグが置かれている。
「熊になった少年」 「今は亡き大地を偲ぶ島梟の嘆きの歌」
カムイユカラを思わせる詩的な内容であった。
あーあ。 終わったな。
長編小説の醍醐味を満喫した二週間だった。
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