【読】五木寛之と沖浦和光
沖浦和光 (おきうら・かずてる) という人がいる。
民俗学者、社会学者と呼べばいいのか。
なかなかユニークな学者さんで、ぼくは好きなのである。
『幻の漂白民・サンカ』 文藝春秋 2001年
『瀬戸内の民俗誌』 岩波新書569 1998年
『竹の民俗誌』 岩波新書187 1991年
この沖浦さんと五木寛之の対談
『辺界の輝き』 岩波書店 2002年
が面白い。
『辺界の輝き 日本文化の深層をゆく』
― 目次 ―
漂白民と日本史の地下伏流
「化外の民」「夷人雑類」「屠沽の下類」
遊芸民の世界――聖と賤の二十構造
海民の文化と水軍の歴史
日本文化の深層を掘り起こす
五木寛之の 『戒厳令の夜』 が「小説新潮」に連載されたとき(1975年)、ぼくは毎号たのしみにして購読していた。五木寛之をリアルタイムに読んだのは、これが最初だったかもしれない。
その後の『風の王国』は、「サンカ」をクローズアップした小説。
「サンカ」という言葉じたいに問題があるようだが、柳田国男、三角寛によって紹介された「幻の漂白民」である。明治以降、いわれない差別を受けたりもしている。
初期の柳田国男はまだしも、三角寛という人がクセ者で、センセーショナルなとりあげかた、紹介のしかたをしたものだから、好奇の目で見られることが多かった。
ここにあげた本は、いずれも、ぼくにとっては衝撃的で「目から鱗」の読書体験だった。
《参考》
「サンカ」 ― Wikipedeiaから ―
山窩(サンカまたはサンガ)は日本の山地を漂泊し、河川漁労、竹細工などを生業としていた非定住民の集団である。
山家とも呼ばれる。独特の隠語を喋り、サンカ文字を使用し、農耕せず、定住せず、政治権力に服従しないなど、大和民族とは明らかに文化が違っていた。
その実態は明らかでなはく、分類や起源には様々な説があり、謎に包まれているがゆえに一部には滑稽な珍説も見られる。
サンカが、日本の少数民族の範疇なのか、歴史的に様々な姿や呼称で日本の様々な時代に記録されてきた、非定住文化をもつ日本人なのかは現在不明である。
少なくとも、近世以降、政治権力に公認された共同体である、町や村に編成された人々ではなかった。
柳田国男は、「人類学雑誌」に彼等の記述を行っている。
サンカは、明治から徐々に被差別部落や都市労働者層に吸収され、また戸籍と定住を強要され徴兵されていった結果、戦後に日本文化と同化し、姿を消した。
ネット検索で興味深いサイトをみつけた。
「サンカ(山窩)を考える」
http://www.kumanolife.com/History/kenshi1.html
(メインサイトはこちら)
「自然の中へ そして心の中へ!」
http://www.kumanolife.com/index.html
制作者がどういう人かは知らないが、情報としての価値はあると思う。
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コメント
「辺界の輝き」は是非読んでみたいと思っていますがまだ未発見。「風の王国」は不思議な感覚で読みましたが。その後この件については深まりを自分の中でしていないので、この際もうすこし勉強をしてみます。
投稿: 玄柊 | 2006年2月19日 (日) 17時04分
『戒厳令の夜』『風の王国』の巻末にある参考文献一覧をみたのですが、五木さんの関心の深さがあらわれています。
ぼく個人的には、じぶんのルーツを知りたいと思っているのですが、縄文人の血がどこかに流れているような気がしてなりません。
投稿: やまおじさん | 2006年2月19日 (日) 17時59分
そう言えば手のひらを見て「あなたは弥生人だ」と言われたことがあります。手のひらで分かるらしい。相手は高校の社会の先生でした。
投稿: 玄柊 | 2006年2月19日 (日) 21時10分
五木さんの本が好きで、少しずつ書評を書き溜めているのですが、
今回、『辺界の輝き』たどりつきました。
とてもおもしろくて、わくわくしながら読み進めました。
この列島に、漂流して自由に生きていく人たちがいたのか
という衝撃でいっぱいです。
ちなみに、私は白馬岳の富山県側の入り口の町である朝日町に住んでいます。
投稿: 野末雅寛 | 2006年4月16日 (日) 06時23分
>野末雅寛さん
ご訪問、ありがとうございます。
コメントいただき、とても嬉しく思います。
野末さんのブログも拝見しました。
ここにも五木ファンが・・・嬉しいですね。
少しずつ読ませていただきます。
投稿: やまおじさん | 2006年4月16日 (日) 09時19分