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2006年2月15日 (水)

【読】アンソロジスト五木寛之

アンソロジー(anthology)と呼ばれるスタイルの本がある。
いろいろな作家の作品を集めた「選集」である。

五木寛之にはまっていた時期、小説・エッセイのみならず、彼の手になるアンソロジーまで買って読んでいた。

matsuri1matsuri2『日本の名随筆 44 祭』 五木寛之 編 作品社 1986年

このシリーズは、いまでも本屋の書棚にならんでいる。
いろんなテーマがあり、編者がそれぞれユニークなのだ。
この「祭」は、五木さんのアンテナの幅広さがうかがえる内容だ。
野口雨情、柳田国男、折口信夫、三島由紀夫、梅原猛、堀田善衛、岡本かの子、といった有名どころに混じって、松永伍一、椎名誠あたりを選んでいるところが五木さんらしく興味深い。

ongaku『音楽小説名作選』 五木寛之・選 日本ペンクラブ編
 集英社文庫 日本名作シリーズ2 1979年

この文庫シリーズが好きで、ずいぶんたくさん買って読んでいた。
音楽小説がテーマのこのアンソロジーも、五木さんらしい編集だ。

「ピアノ」芥川龍之介/「ファンキー・ジャンプ」石原慎太郎/「GIブルース」五木寛之/「津軽じょんから節」長部日出雄/「生きながらブルースに葬られ」河野典生/「星のクヮルテット」今官一/「足踏みオルガン」阪田寛夫/「今も時だ」立松和平/「熊の木本線」筒井康隆/「月」三島由紀夫/「指」宮原昭夫/「ジングル・ベル」安岡章太郎

音楽好き、小説好きな人には、たまらなく面白い一冊だと思う。
巻末に巖谷大四との対談解説がある。
その中で、五木さんは「アンソロジーの批評性」について持論を展開している。
ちょっとだけ紹介してみよう。

<実は今回、こういう形で作品を編む仕事をしてみて、アンソロジーというものが、小説とか文芸の世界で、非常に大切なものである、ということを、あらためて再認識したような次第ですけれども・・・。(略)
これだけ出版物が氾濫して来て、さて何を読むべきか、というときに、人にはそれぞれ好みがあり見方の違いがありますから、「これを読め」というふうな押しつけはできないけれども、・・・(略)
そういう読者に対して、ぼくがこういう形で一つの提示をするというのは、アンソロジストとしての批評性が問われる恐ろしい仕事であるのと同時に、とてもやりがいのある嬉(たの)しい仕事だというふうにおもうんです。・・・>

いま、ひさしぶりに、この本を読みかえしている。

芥川龍之介の『ピアノ』という小品がいい。
五木さんは、この小説を庄司薫(ピアニストの中村紘子さんの夫君)から教えられたという。
石原慎太郎の「ファンキー・ジャンプ」というジャズを題材にした小説も、当時(1959年)は斬新な試みだったのだろうと思う。
五木さんの『GIブルース』も何十年ぶりかの再読だが、新鮮だった。
長部日出雄の『津軽じょんから節』を読んでいるところだ。

いまから27年前に編まれたこのアンソロジーに載っている作家の写真を見ると、五木寛之にしろ、長部日出雄にしろ、筒井康隆にしろ、みんな若々しくて、なにやらおかしい。

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コメント

このシリーズは持っているものが何冊かありますが「祭り」は、五木編集でしたか・・。「音楽小説名作選」はいい本ですね。愛読書の一つです。法研から出ている「漂泊者のノート」(斉藤慎爾との共作)という本、このアンソロジーは4年前のものですが、こちらも彼らの個性が出ていて面白いです。やまおじさんなら、とっくにこの本手に入れているかも知れませんね。

投稿: 玄柊 | 2006年2月15日 (水) 23時09分

『漂泊者のノート』という本は、知りませんでした。
ここ数年、五木さんの新刊にあまり関心がなかったもので。
ネットで調べてみると、興味深い本でしたので、いずれそのうち。

投稿: やまおじさん | 2006年2月17日 (金) 22時04分

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