【読】雑民の魂
駒尺喜美(こましゃく・きみ)という人がいる。
ネットのWikipediaによれば・・・
近代文学研究者、女性学者。
元法政大学教授。大阪市出身。
京都人文学園卒業後、法政大学大学院修了。
1990年まで法政大学教養学部教授。専門は日本近代文学。
夏目漱石作品や著書「紫式部のメッセージ」の中で、「源氏物語」などを女性学の視点で読み直し、新しい説を立てた。また、日本女性学会の創設にも力を注いだとされる。
とある。 学者さんであるが、堅物ではない。
というのも・・・
駒尺喜美 『雑民の魂 五木寛之をどう読むか』
1977年 講談社文庫(1979年)
― 「まえがきとしてミーハーの声」から ―
ここ二、三年来、わたしは人の顔を見るごとに、五木寛之がああいっているこういっているとしゃべり散らしていたので、ある友人は、わたしのことを五木の顔にいかれているのだ、と気の利いた批評をしてくれた。
だが残念ながら、わたしが五木の顔写真をまじまじと見つめたのは、すかり彼にいかれてしまってからのことであった。とはいうものの、今はもちろん彼の顔も好きである。本当は彼の写真に(著書ではなく)サインをもらって、桐の箱にでも納めておきたい心境である。久しぶりにわたしは「ファン」の心境をとりもどして、水を得た魚のような心境である。・・・
いいなぁ。こういう学者さん。
駒尺さんは、「15歳から20歳までミーハーの生活を満喫していた」 と、みずから書いているほどの、ふつうの人である。 「毎夜のごとく大阪のミナミの繁華街をうろついて、劇場やダンス・ホールの中で生活の大半を過ごしていた」 という、根っからの不良少女であったという。
ぼくはまた、このような人の書いた本を信用する。
駒尺さんのいう「雑民」という言葉がいい。
駒尺さんは、この本のあとがきでこう書いている。
「五木寛之との出会いは、わたしにとってまことに衝撃的であった。それは、五木さんの<雑民の魂>にふれて、わたしの内部にねむりこんでいた、<雑民の魂>がゆり起こされたからである。雑民もまた、声なき声でなく声ある声をもちたいと思う」
『魔女の論理』 という興味深い本もある。
この本には、五木寛之の推薦文がある(右下)。
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コメント
「魔女の論理」は、知りませんでした。さらには五木の推薦文までもらっていたのですか。面白そうですね。
投稿: 玄柊 | 2006年2月14日 (火) 23時07分
『魔女の論理』は、てもとにありますが、内容はすっかり忘れています。そのうち読みなおしてみたいと思っています。
ちなみに、『雑民の魂』を読みかえしていて、五木さんの『さらばモスクワ愚連隊』が無性に読みたくなったのでした。
駒尺さんは、例の田嶋センセイの恩師(法政大学)だったように聞いています。
(田嶋陽子さん本人がTVでしゃべっていたような記憶が・・・)
投稿: やまおじさん | 2006年2月15日 (水) 22時38分