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2006年2月23日 (木)

【読】鶴見和子と柳田国男

鶴見和子さんの 『漂泊と定住と』(筑摩書房・1977年)から、学ぶことが多い。
ぼくは、どうやら読まず嫌いで柳田国男のイメージをもっていたようだと、反省。

この鶴見さんの本は、すでに付箋だらけだ。
図書館に返すまえに、ノートにとらなくちゃ。
興味ぶかい記述、感心したこと、知らなかったこと、そういったことがいっぱい詰まった、宝の山のような一冊(ぼくにとっては)。

とりあえず、この本に触発されて読んでみようと思った本を二冊あげておこう。

kyoudougensou吉本隆明 『改訂新版 共同幻想論』 (角川文庫・1982年)

ずいぶん前に一度読んだが、再読してみようと思う。
難解といわれているが、ぼくには面白かった。
『遠野物語』と『古事記』の二冊だけを原典として、「個人幻想・対幻想・共同幻想」というユニークな思想を展開している。

鶴見和子によれば、「日本の知識人の柳田学への評価」には「四つの型」があるという。
(表現は、ぼく流にかえてある)
1)柳田には体系だった理論がないからダメだが、柳田の研究成果は利用価値がある、という評価・・・石田英一郎、家永三郎など。
2)柳田の理論にはふれず、その研究成果を利用して創造的な業績をあげた人々・・・神島二郎、吉本隆明など。
3)柳田の理論のある面は積極的に評価しながらも、決定的な面で欠陥があるとして批判する立場・・・安永寿延(柳田には天皇制批判がないという)、益田勝実(柳田の世相解説が政治的現実にあいわたらないという)など。
4)柳田民俗学に価値を認め、その理論の積極的意義を高く評価する態度・・・橋川文三、花田清輝など。

鶴見さんは、「きら星の如く並ぶ柳田学研究者ならびに批評家を網羅したわけではないが」とことわりながら、「第四の論者たちに最大の敬意を表する」という。

ところで、もう一冊、読んでみようとおもったのがこれ。

yanagita_sesou柳田國男 『明治大正史 世相篇 新装版』 (講談社学術文庫・1993年)

鶴見さんは、この本を高く評価し、柳田国男の思想を論じている。
(「常民と世相史 ―社会変動論としての『明治大正史世相篇』―)
その一節。

<柳田には理論がないといわれるが、決してそうではない。帰納的に引き出してきた、比較的、抽象段階の高い操作仮説を、柳田はいく組も持っていたと思う。>
<古いものが遅れたもので、新しいものが進歩したものでもない。新しいものと古いものとの上下の価値観をとっぱらったことが、柳田国男の一つの功績だと思う。>

鶴見さんの『漂泊と定住と』には、他にも書ききれないほどたくさんの興味深い記述がある。
何度も読みかえしては、気になるところに付箋を貼り続けている・・・。
図書館への返却期限は、一週間先。

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コメント

古いものと新しいものとの上下の価値観をとっぱらったことが、柳田国男の功績・・というところがいいなと思いました。温故知新とは違うかも知れませんが、過去と現在を繋ぐものをひたすら考えている今のわたしには響く言葉でした。

投稿: 玄柊 | 2006年2月23日 (木) 23時10分

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