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2006年2月11日 (土)

【読】柳田国男

柳田国男 (やなぎた・くにお 1875.7.31 - 1962.8.8)
日本の民俗学を学問として構築した。
農政学を学び、のち民俗学者となった。
近代化の中で忘れられていた民衆(柳田が提唱した語では常民)の世界に目を向け、日本民俗学の祖となった。急速な近代化にさらされて省みられなくなった伝統的な生活を学問の対象に初めてすえた功績は大きい。
各地に民俗学者を育成し、系統的な民俗学研究、郷土研究を行う基礎を築いた。 (Wikipediaから)

・・・とまあ、こういうふうに紹介されているエライ人物である。
興味はわくが、とっつきにくいのである。
『遠野物語』 などという有名な著作は、読んでみてとても面白かったのだが・・・。

近くの図書館に、膨大な文庫版全集(ちくま文庫・全32巻・各巻700ページ!)という気になるものが置いてあるのだが、いったいどこから手をつけたらいいのか・・・と、途方にくれていたのである。

ところが、さきごろ面白い本を読んだ。

akasaka_yanagita赤坂憲雄 著 『柳田国男の読み方 ―もうひとつの民俗学は可能か』
 ちくま新書 1994.9.20  (カバー表紙のコピーから)
・・・「民俗学」が排除したモノたち、物語という異形の身体、山の神や山人・アイヌの人々、漂白する人々や被差別の民・・・、そのいずれもが稲作・常民・祖霊の周縁ないし外部であることは、いったい何を意味するのか。

この200ページほどの新書を読んで、ぼくの「柳田国男像」が焦点をむすんだ気がする。
著者の赤坂憲雄さんは、20代の終わりに、古本屋で柳田国男全集(全36巻)を手に入れ、読破したという。
国立にある谷川(やがわ)書店という古書店の名前まであげている。
じつは、ぼくもこの店を知っている。
それだけのことで著者が身近に感じられ、なんだかうれしくなった。

「 ・・・『定本柳田国男全集』はそこで買った。たしか四万五千円の値段だった。初版の、固い箱入りのもので、読まれた形跡はまるでなかった。格安だったが、当時のわたしにとってはかなりの勇気がいる買い物だった。段ボール箱に詰め、自転車の荷台にくくりつけて、国分寺のアパートまで運んだ。荷台から伝わってくるずっしりとした重量感が、心地よかった」 (著者あとがき)

このような人の書いた、たんねんな論考だから、ぼくは信用する。

著者は、柳田国男の仕事を「初期」「前期」「後期」に分け、初期(明治30年代)・前期(明治40年代~大正末年)の柳田の関心のありようにスポットをあてる。
そこには、後期の柳田が切り捨てた「非・常民」(山人、漂泊者、被差別民)への、柳田の強い関心と熱い視線が感じられるのだ。

これまで、柳田国男にはなかなか手が出なかったが、この赤坂さんのガイドを道案内に、柳田国男という巨人の森にすこしずつ踏みこんでみようかな、という気になっている。

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コメント

柳田国男全集は36巻ですか?いやいやすごい数ですね。さすがに私でも手に入れるのは考えてしまう量です。でも、赤坂さんの情熱、動かされますね。

投稿: 玄柊 | 2006年2月11日 (土) 21時19分

赤坂憲雄さんは、ぼくらとほぼ同年代です。
専門的な内容ですが、とてもわかりやすい本でした。
この本には付箋がたくさん付きました(笑)。

投稿: やまおじさん | 2006年2月11日 (土) 23時53分

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