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2006年2月10日 (金)

【読】日本幻論

五木寛之 『日本幻論』 という本もあった。

ituski_genron1993年 新潮社 (1996年 新潮文庫)

(新潮文庫カバー裏のコピー)
この国には、見えていないもう一つの国がある―。
幻の隠岐共和国、かくれ念仏の神仏習合的なありかた、柳田国男と南方熊楠の違い、蓮如の教えの俗信的な力強さなど、いずれも正統に対する異端、民俗に対する土俗などの位置づけを踏まえてテーマを展開している。 非・常民文化の水脈を探り、隠された日本人の原像と日本文化の基層を探る九編。 五木文学の原点を語った衝撃の幻論集。

この本、しばらく忘れていたが、あらためて広げてみると五木さんの着眼点の鋭さに気づく。
「柳田国男と南方熊楠」の章など、ぼくが感じていたことと一致して、我が意をえたような気がした。

五木さんは、柳田国男よりも南方熊楠が「ひいき」らしい。
ひいき、なんて、へんな言い方かもしれないが、柳田国男の業績は認めながらも、彼がたどった「常民」への退却というか、視点の後退に五木さんは異をとなえる。
五木さんの立場は、終始、「非・常民」である。

「彼のいう常民というのは、決して都会のルンペンではない。 これはもうはっきりしている。 農村に定住する人々である。 焼畑農業をやって移動しながら生きている人たちではない。 炭焼きをしながら放浪している人たちでもない。 マタギとか、木地師とかいろんな連中がいるけれども、そういうものも、一応、常民の枠の中には入らない」

柳田国男について、ぼくは詳しく知らないのであまり言えないが、彼もはじめは「非・常民」に関心をよせていたのである。 このあたり、とても興味深い。
五木さんも、南方熊楠との往復書簡について引用しながら、柳田国男の変化を指摘している。

『柳田国男 南方熊楠 往復書簡集』 (平凡社ライブラリー、他)が面白かった。
「晴れときどき曇りのち温泉」の資料蔵―南方熊楠の項で、すこしだけふれた。
http://yamaoji.hp.infoseek.co.jp/kura.html#minakata

南方熊楠とともに柳田国男についても、この先いちどはきちんと読んでみたいと思っているのである。

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コメント

「日本幻論」は新刊で買ったとき。五木のこの方向もあるのかと驚きました。ちょうど「風の王国」を出したばかりで、彼はこちらへ入り込んでいました。まさに蓮如へ向かう前段階なのでしょうか。ところで、NHKの教育テレビ火曜日夜10:25~。3月放送ですが詩人吉増剛造が「柳田国男」を語るようです。私もなかなか入り込むきっかけがつかめないので見てみるつもりです。この番組、時々面白いものがあります。テキストもあります。

投稿: 玄柊 | 2006年2月11日 (土) 08時11分

五木さんのデビュー当時の著作を読み返しています。
思うに、五木さんの根っこにある思想は変わっていない。
まさに「雜民の魂」を持ち続けている人、という感じを強くしています。
しばらく、このブログでとりあげていくつもりです。

NHK教育TVには面白そうな番組が多いのですが、なかなか見る機会がありません。
柳田国男に関するテキスト、探してみます。

投稿: やまおじさん | 2006年2月11日 (土) 08時28分

これですね、NHK教育TVテキスト。

NHK知るを楽しむ
私のこだわり人物伝 2006年2・3月 白洲正子~目利きの肖像/柳田国男~詩人の魂
http://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=0130&webCode=61891402006

投稿: やまおじさn | 2006年2月11日 (土) 08時39分

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