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2006年4月22日 (土)

【読】ペーパーバックライター(続)

五木寛之さんの 『日記』 (岩波新書・1995年)の、三十七歳の日記(1970年)の中に、次のような一節がある。
ビートルズの<ペイパーバック・ライター>という歌に触れた雑感である。


ビートルズの歌の中に、<ペイパーバック・ライター>というのがあり、これがすっかり気に入ってしまって、このところひょんな時に<ペイパーバック・ライター>のリフレインが口をついて出てきて困ってしまう。 日本の流行歌の詞も、少しはましになってきたが、どう見渡してみても、ビートルズの足もとにもおよばない月並みなものばかりだ。 ユーモアといえば、<おなら>だの<チンポコ>だのと、そんな言葉を使ってユーモラスな歌が書けるわけがないではないか。
(五木寛之 『日記』 岩波新書 P.214)


五木さんといえば、日本の歌謡曲や演歌を悪く言う人たちに対して「そうじゃないよ」と主張し、「手垢のついた」「月並みな」表現を自分はあえて使うのだ、と宣言している人だ。
(手垢がつくほど人々に親しまれ、使われ続けてきたものが悪いハズがない、というのが五木さんの考え方である。)
その五木さんにして、この言葉・・・というのが興味深かった。

そこで、よく知っていると思っていたビートルズのこの歌の日本語訳詞を読んでみた。
出典は片岡義男訳 『ビートルズ詩集』 (角川文庫・1973年)だ。
この本も、ぼくの本棚で埃をかぶって眠りつづけていたもの。

JASRAC(社団法人 日本音楽著作権協会)のシールまで貼ってある本で、どこまで引用していいのか困るが、無難な範囲(?)で引き写してみようか。

Beatles1Beatles2ペイパーバック・ライター (片岡義男訳)

紳士あるいは淑女の皆様
私の本を読んでいただけますか
何年もかかって書いたのです
ちょっとごらんいただけませんか ・・・

私は仕事がほしいのです
私はペイパーバック・ライターに
なりたいのです
ペイパーバック・ライター

いやらしい男のいやらしい物語です
奥さんがまつわりつくのですが
ご主人を理解しているわけではないのです ・・・

だいたい千ページあります
数ページの増減はお気になさらず
一、二週間のうちにもっと書きます
気に入っていただけたなら
長くしてもいいですし
ちがうスタイルになおしもします ・・・

ほんとうにお好みに合いましたなら
出版著作権をおゆずりいたします
一夜にして百万というかせぎになりますよ ・・・


そうか。
こんな可笑しな内容の歌詞だったんだ。

ぼくは、英語が得意じゃないし、ビートルズの歌の詞を熱心に読んでいなかったから、この歌もなんとなく聴いていたのだが、歌詞の意味がわかると面白いなぁと思う。
五木さんが37歳の頃、この歌を気に入ったというワケが、なんとなくわかったような気がする。

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コメント

私は小学校の5.6年から、ビートルズがデビュー以来ずっと聞いています。歌詞はもちろん全部分かってはいませんが好きでした。しかし、世間の風潮・・人気のありすぎ、騒ぎすぎ、ファンですとは言いにくい感じもありました。しかし、こうして二人がこの世を去り時が過ぎ、やまおじさんの紹介してくれた歌詞を読むとやはりいいですね。ユーモアと悲しさと愛・・政治、哲学的なものへも関心を持った時期もあり、いろんなものが詰め込まれています。いいものはペーパーバックでも残るように、音楽も同様ですね。

投稿: 玄柊 | 2006年4月22日 (土) 08時07分

ぼくはねぇ、上々颱風の<Let it be>をこよなく愛します。
(日本語詞:紅龍)
♪ いつでも神様が 見つめているよ
 だから泣かないで Let it be ♪

投稿: やまおじさん | 2006年4月22日 (土) 09時39分

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