【山】黄色いテント
田淵行男 さんという山岳写真家がいらした。
明治38年(1905)生れ、1989年に83歳で亡くなっている。
写真家でもあったが、ナチュラリストと呼びたい人だ。
この人の著作に 『黄色いテント』 という本がある。
箱入りの立派な本だが、この箱の写真が好きだ。
田淵さんが愛用したテントの写真である。
― 『黄色いテント』 「自序にかえて」 より ―
黄色というより橙色に近い色調で、蜜柑色と言ったほうが近い。 山好きな人には、さらにニッコウキスゲ色と言い直したほうが一段と通りがよいかも知れない。 私もそのテントに別の愛称をつけるとすれば、「キスゲ号」としたであろう。 (略)
その頃、私の山行は、たいてい黄色いテントを担いでの一人旅であった。 山中三、四泊のことが多かったが、時に十日を越すこともあって、食糧だけでも相当の嵩と目方になった。 その上カメラが加わる。 (略)
有難いことに、その頃の山はどこにテントを張ってもさしつかえなかったので、これはと思う所には体調次第、天候次第で、どこにでも自由にザックをおろすことが出来た。 (略)
私の見つけるキャンプサイトは、ひそやかな谷間のこともあったし、ハイマツに囲まれた明るい砂礫の稜線のこともあった。 時に折り重なる巨岩の隙間を利用することもあった。 邪魔な石くれを取りのけるくらいでわけなくテントをひろげることが出来た。安曇野に「田淵行男記念館」がある。
http://azumino-artline.net/museum/tabuchi/
もうずいぶん前に、いちどだけ訪ねたことがある。
ぼくもまた、黄色いテントをかついで、北アルプスの山々を歩いていた時期があった。
白馬(しろうま)、五龍、鹿島槍、劔、立山、槍、穂高・・・。
山小屋泊りも多かったが、テントやツェルトでの山行の記憶はことのほか強いのだ。
日本百名山にあげられている山々を歩いた思い出をこのブログに掲載しているが、いよいよ北アルプス山域にかかる。
1990年から92年頃にかけて、いちばん元気のあった頃の記録である。ぼくの愛用する 「黄色いテント」
ICI石井スポーツ製 ゴアテックス 2、3人用
写真は、1992年5月
(左)徳沢キャンプ場 (右)涸沢
― 田淵行男さんの本と、近藤信行さんによる雑誌連載記事 ―
田淵行男 『山の季節』 小学館文庫
近藤信行 「田淵行男 安曇野のナチュラリスト」 全20回連載
(「山と渓谷」’90年1月号~’91年8月号 山と渓谷社)
| 固定リンク
「【山】山日誌」カテゴリの記事
- 【山】ひさしぶりの山歩き(黒川鶏冠山)(2018.06.03)
- 【雑】いつのまにか5月(2016.05.03)
- 【山】再開しようかな(2014.05.22)
- 【山】20年前の、こんな写真が(2014.05.06)
- 【山】22年前の穂高(2014.04.21)
コメント
「黄色いテント」・・憧れの本ですが、さすがに本好きの私ですが手に入れていません。山には突き動かされる魅力がありますね。しかし、先日札幌と小樽を6時間ほど歩いたら、翌日、足腰が疲れて大変でした。2日目の今日はかなり回復・・・。冬の運動不足と年齢でしょうか。雪が融けたら、自転車と林道歩きで、山行への体力回復に努めます。
投稿: 玄柊 | 2006年4月 3日 (月) 23時18分
>玄柊さん
田淵行男さんの写真、ぼくは好きです。
ダイナミックな構図の山の写真、山麓の里の風景、手前に草木を配置した写真・・・どれも、いいですね。
ぼくも、そろそろ山歩きを始めようかなぁ。
投稿: やまおじさん | 2006年4月 5日 (水) 20時44分