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2006年9月 6日 (水)

【読】山田風太郎の本

なんだかヘンな国だよなぁ・・・というのが、今日のニュースを見聞きした感想。
先の戦争の総括もあいまいなままだし、皇室や天皇制についても同じ。
無邪気に祝杯をあげたり、心底うれしそうな顔をしている(ツミのない)人びとをテレビで見て、ゆううつになった。
そりゃあ、お子さんが生まれるのは、誰にとってもおめでたいことでしょうけど。
よそ様のお子さんのことで、そんなにはしゃぐんですかねぇ。

それはさておき。
山田風太郎の文庫本をみつけたので、買ってきて読み始めている。

Futaro_doujitsu山田風太郎 『同日同刻』 ちくま文庫
 2006年8月10日 第一刷発行 840円(本体価格)
サブタイトル「太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日」
<太平洋戦争に関する本はすでにおびただしいものがあるけれど、やはりあれは日本歴史上、仏教伝来とか蒙古襲来とか開国維新とかいう事件とは比を絶する大事件であって、いくら語っても語りつくせぬ戦争であると思う。> (まえがき)

山田風太郎がこの本でとった方法は、<当時の敵味方の指導者、将軍、兵、民衆の姿を、真実ないし真実と思われる記録だけをもって再現>するというもの。
パールハーバーの奇襲の日(昭和16年12月8日)の一日を、さまざまな立場の回想録や日記から引用している。

当時の日本の文化人の多くが(高村高太郎、坂口安吾、太宰治、伊藤整、幸田露伴、横光利一、etc)、ハワイ奇襲の成功に胸を躍らせていた。
ひとりわが道をいく、という感じのさめた目でこの騒ぎを日記に書いていたのは、永井荷風(断腸亭日乗)ぐらいか。 なんとも不思議な光景だ。

旧制広島高校に、「鬼のあだ名で文科生に最も畏怖された」雑賀(さいが)教授という人がいたのだと。
<廊下のマイクが臨時ニュースを伝えると、教授は廊下に飛び出して、頓狂な声で〝万歳〟を叫んだ。>
<この雑賀教授こそ、戦後広島の原爆慰霊碑の「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」の文句を書いた人であった。 そして、その頓狂な声に廊下に飛び出した学生の中には、四年後学徒兵として原爆で死んだ学生たちもいた。>
こう引用する山田風太郎の皮肉をこめたまなざし。

「過ちは繰返しませぬから」 というのはどこかおかしいと、ずっと引っかかっていたぼくは、これを読んで心中快哉をさけんだ。

さすが、山田風太郎。 おそるべし。

Futaro_husenFutaro_rinjyuFutaro_banmeshi   

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コメント

飄々とした雰囲気の山田風太郎、彼は目覚めた人でしたね。荷風だといかにも・・。なるほど、この本は最近出ていたのですね。手に入れます。

投稿: 玄柊 | 2006年9月 7日 (木) 07時20分

>玄柊さん
山田風太郎の小説は読んだことがないのですが、小説以外の本で好きなものが多いですね。
この『同日同刻』もいい本ですよ。

投稿: やまおじさん | 2006年9月 7日 (木) 21時25分

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