【読】世間
先日亡くなった阿部謹也さんの著作 『「世間」とは何か』(講談社現代新書)を読み返した。阿部謹也 『「世間」とは何か』
講談社現代新書1262 (1995.7.20)
前に読んだのは、たしかこの本が出てすぐの頃。
今から10年も前なので、内容をほとんど憶えていなかったが、今回再読してみて、とてもスリリングな内容だった。
日本に「社会」(society)はない。 あるのは「世間」という魔物である。
西洋の人が言う「社会」は、「個人」という概念の定着していない日本には存在しない。
(みんな日本にも「社会」があると思っているが、それはウソである)
ぼくなりの乱暴な要約だが、このような著者の主張にうなずかざるをえない。
「世間」・・・この言葉を、ぼくらは日常生活の中でしょっちゅう使っている。
「世間を騒がせて申しわけない」というのが、不祥事を起こした人たちが記者会見などで言うことば。
「私は悪くない」が、「世間を騒がせたこと」については「申しわけない」と、お詫びするのである。
♪いいえ 世間に負けた~♪ という歌の文句もある。
「世間体が悪い」「世間知らず」「世間を騒がす」「世間に顔向けできない」・・・等々。
ぼくらの体にしみついた、この「世間」とはいったい何か。
阿部謹也さんが終生のテーマとしたこの問題に、ぼくもこだわってみたい、と考えたのだ。そんな折、面白い本をみつけた。
阿部謹也
『日本人の歴史意識 ―「世間」という視角から―』
岩波新書874 (2004.1.20)
上の講談社現代新書の続編ともいえるもの。
きのうから読み始めた。
(図書館から借りたのだが、今日、本屋でみつけたので買った)
他にも、『西洋中世の愛と人格 「世間」論序説』 朝日新聞社 (1992.12.10)
という著書もぼくの手許にあるのだが、まだきちんと読んでいない。
(買ったまま放置してあった)
読み終えたら、このブログで紹介できればいいな、と思っている。
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コメント
「世間」もそうですが、「愛」も日本人の意味する「愛」とキリスト教国の「愛」とは意味合いが違っているようです。ただし、キリスト教信者のブッシュが愛の名の下にテロを切っ掛けに戦争を起こすのですから、西洋の愛も希薄です。「愛とは後悔しないこと」という歌い文句でヒットした映画がありますが
「愛」も微妙な言葉です。阿部さんの朝日から出ている本、読んでみたいですね。
投稿: 玄柊 | 2006年9月20日 (水) 08時35分
阿部謹也先生の本と同じような視点で、今読み返しても新鮮な本で、パレスチナ出身でアメリカの大学教授だったエドワード・E・サイードが書いた『オリエンタリズム』という本もあります。
かなりボリュームのある著作ですが、オリエント(東洋)とか、イスラム、というもののイメージのあやうさについて、とてもわかりやすい文章で書かれていてオススメです。
視点を変える、あたりまえのように使っている言葉の本質についてちょっと考えてみる・・・そんなことに気づかせてくれる本との出会いはありがたいですよね。
私も久しぶりに阿部先生の本を読み返してみようと思います(大学時代の本の半分以上は実家に置きっぱなしです。反省・・・;)
投稿: Shinobu | 2006年9月20日 (水) 19時30分
>玄柊さん
「愛」ということばも日本の仏教では「愛欲」という意味で、否定的に使われていたようですね。
阿部謹也さんは中世史が専門ですから、西洋との比較が興味深いです。
>Shinobuさん
いらっしゃいませ。
オススメの『オリエンタリズム』という本、興味があるので探してみます。
阿部謹也さんは大学改革にも取り組んでいらした、日本の学者さんの中では珍しく「生活」に根ざした生き方をされた方。
こういう先生に学んだ人をうらやましく思います。
投稿: やまおじさん | 2006年9月20日 (水) 21時06分
Shinobuさんがオススメの
『オリエンタリズム』
エドワード・W.サイード著
平凡社ライブラリー 上・下2巻
http://www.heibonsha.co.jp/
ぼくの住む地域の図書館にもありました。
興味深い本です。
投稿: やまおじさん | 2006年9月24日 (日) 11時02分