【読】本、じゅずつなぎ
岡崎武志さんの 『古本でお散歩』 (ちくま文庫)は、刺激的で、かつ楽しい本だった。
古本の好きな方には、おすすめ。
週末の仕事帰りというのは気持ちに余裕ができるのか、書店に寄ってしまったりする。国分寺の駅ビルにある紀伊国屋書店。
岡崎さんの単行本を見つけて、買ってしまった。
『古本道場』 角田光代・岡崎武志 (ポプラ社)
もう、表紙を見ただけで欲しくなるような本。
角田さんという女性がどんな方か、噂でしか知らないが、なぜか魅力的な気がする。 この本では、岡崎さんを師匠として、いっしょに古本屋めぐりをしている(らしい)。
巻頭の数ページにわたって、古本屋のカラー写真が掲載されていて、たまらない。
ところで、『古本でお散歩』 の中に、ぼくを嬉しくさせた部分が三ヶ所ある。
ひとつは、高円寺の 「古本酒場 コクテイル」 が紹介されているところ(P.352)。
(きのう書いたばかりだが、何度でも書いてしまうぞ)
もうひとつ、「戦場のメリークリスマス」 と題した文章の中、金子光晴にふれたところ(P.242「なぜか上海」)。
金子光晴が昭和3年11月に、長崎から上海に渡ったときのエピソードだ。
そして、三つ目。「『そいなみ本』とは何か」 という文章の中で、なんとなんと、ぼくの好きな桂枝雀の本、『枝雀のアクション英語講座』 (祥伝社/ノンブック・昭和63年) が紹介されていたのだ。
ちなみに、「そいなみ本」とは、「そういえばいざとなるとなかなか見つからない本」(岡崎さんの造語)。
エッヘン。 持ってますよ、この本、自慢じゃないが。
じつはまだ読んでないけど、本棚に眠ってました。
たしかに、古本屋でもなければ見かけなくなった本かもしれないな。
買ったときは、読もうと思ったのに、ずっと読まずにとってあった本だ。
枝雀の英語落語は、とてつもなく面白い。
岡崎さんの紹介文によれば、
<故人となった上方落語の人気者、桂枝雀が熱を入れていたのが英語による落語であった。 あまりに日本的な世界、日本的な表現を英語に移し替えるというのは大変な作業で、その試行錯誤の過程を語ることで、英語表現の特徴と、日本語表現の違いを語ったもの。 枝雀の本はたくさん出ているが、この本はめったに見ない。>
まさに、「そいなみ本」ということらしい。 読まなくちゃ。
ぼくはやっぱり本が好きらしく、読める分量以上の本を買ってしまう病気をもっている。
しかし、内心では 「一生読まないかもしれないのに、こんなに買っていいのかなぁ・・・」 と不安に思う、「読まなくちゃ症候群」にかかっていたらしい。
岡崎さんは、「本は読まなくてもいい、手許にあるだけで幸せになる本もある」 ということを教えてくれた。
ぼくは、岡崎さんの言葉にほっとしたのである。
<古本のこと、わかってねえなあと一発でわかるリトマス試験紙のようなせりふがある。 それは「買った本、全部読むんですか?」 というものだ。 いったい、これまで何十回、この言葉を浴びせられてきたか。/もういい加減慣れっこにはなっているが、それでも、瞬間的にうんざりして、心の中で 「おめえさん、トウシロ(素人)だな」 と賭場のやくざみたいな心境になる。 それは、風俗嬢に向かって、「あなたはお客さん全員に愛を感じて相手をしているんですか」 というようなものだからだ。/(略)読むわけないだろう、全部なんて。>
(『古本でお散歩』 ちくま文庫 P.11 「だからもう、あなたはそう言ってはいけない」)
きょうは、ひさびさにいっぱい書いてしまったなぁ。
最後に、きょうの収穫。
金子光晴のエッセイ集シリーズ(ちくま文庫)。
表紙につられて買ってしまったようなものだが・・・ちくま文庫は、少々値がはるが、装幀がしゃれていて、ぼくは好きだ。どうです。
この表紙だけでも価値のある本だと思いませんか?
『金子光晴 エッセイ・コレクション』
大庭萱朗 編 ちくま文庫
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コメント
「古本道場」実は半年ほど前にBOOK OFFで手にいれていました。角田さん、いいですよ。金子光晴の「異端」も持っています。それにしても「ちくま文庫」や「講談社文芸文庫」はなぜあんなに高いんでしょう。1500円もするのがあります。
投稿: 玄柊 | 2006年10月 7日 (土) 08時57分
>玄柊さん
『古本道場』をご存知でしたか。
角田光代さんのブログを発見しました。
http://blog.mf-davinci.com/kakuta/
文庫も高くなりましたね。
こういう時こそ、古本屋へ(笑)。
投稿: やまおじさん | 2006年10月 7日 (土) 22時54分