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2006年10月18日 (水)

【読】おもしろい新書(続)

きのうの続き。
Edogo_2水原明人 『江戸語・東京語・標準語』 (講談社現代新書)
これが実に面白い。
あっ、我ながら語彙が乏しいなぁ。
どういうふうに面白いのか。

徳川家康が江戸幕府を開いたところから始まるのがいい。
それまでの江戸の地が、ほんとうに辺鄙なところだったことがよくわかった。
そこに人が集まってきて発生した「江戸語」という独特のことば。
武士階級と庶民のことばの違いやら、「江戸っ子と『六方ことば』」と題して、江戸時代初期、下級武士や博徒、遊び人のあいだで流行した乱暴なことばが紹介されている。
「六方ことば」の特徴の一つは、ことばの頭に促音、撥音をともなうことだという。
トッツク、ヒッツク、ブッカケル、ヒッパル、ヒッカク、ヒッタクル、トッチメル、ウッチャル、ツンノメル、ブンマワス、ウッポレル(自惚れる) ・・・今も日常的に使われているものが多い。おもしろいものだ。

明治になって、国定教科書などというものが作られ、標準語化が強引に押しすすめられていったというのも、興味深い。
たとえば、「おかあさん」ということば。
これも、国定教科書ではじめて採用されたもので、一般的なことばではなかったという。
漱石の「坊っちゃん」の中で、下宿の婆さんは「御母さん(おかあさん)」と言うが、坊ちゃんは「御母さん(おっかさん)」と言っている、などということは、この本を読むまで気づかなかった。
「おかあさん」は、当時、西日本の一部でしか使われていなかったのだと。

方言撲滅運動という乱暴なことも、明治の末から大正の初めにかけて行なわれていたらしい。
しかし、その効果もなく、昭和28年の調査でわかったのは、<毎日二回という厳しい発音訓練を受けた生徒達が、四十年後にはまったく他の者と訛の点では区別がつかなくなっているという事実だった>。
どっこい、方言は生きている。 嬉しいね。

「見れる」「食べれる」といった、いわゆる「ら抜きことば」も、関東大震災後の山手(やまのて)ことばの中に突然現れたものだという。 今どきの若いモンのことばの乱れ、などと言っていられないのである。

著者は、日本放送作家協会理事(発行時=1994年現在)の肩書きを持つ脚本家らしい。
「第四章―標準語の普及とラジオ放送」 をいま読んでいるところだが、日本での放送局出現の様子なども詳しく書かれていて、これまた興味深い。

大正14年(1925)3月、東京・芝浦の東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)のスタジオで、ラジオの試験放送が開始され、日本で初めてラジオ放送が実用化。
大正9年(1920)、アメリカで世界初のラジオ局、KDKA局が誕生。
前後して、日本でも、東京朝日、報知、東京日日、大阪の時事、毎日、朝日、名古屋の新愛知など新聞各社(!)を中心に、放送の企業化をめざす動きが起こる。
大正11年(1922)頃から、放送事業の出願者が続出。
大正13年(1924)には、放送出願件数は全国で、なんと64件にもなったという。
その後、紆余曲折があって、日本放送協会(NHK)という事実上の国営放送が誕生した・・・知らなかったなぁ。

まさに、「知るは楽しみなり」(ぼくが今作ったことばです)なのだ。
この本には付箋がいっぱい付きそうだ。

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