【演】始末とケチ
きのうの続きで、桂枝雀さんのTV放映(1983年・大阪毎日放送=TBS)から。
大阪ことばで「始末」とは、「倹約家」「節約家」というニュアンス。
東京だと「ケチ」という露骨な表現になるが、上方ことばはさすがに奥床しい。
「始末の極意」という噺。
『現代上方落語便利事典』 (相羽秋夫著/少年社/1987年) という、文字どおり便利な事典をひもといてみると、枝雀さんの師匠の桂米朝さんの録音があるらしいが、ぼくは聞いていない。
「始末屋」と呼ばれる男に、そのコツ(始末の極意)を教わりにいったアホの話だ。
ストーリーはいたって単純。 ほかの噺でもよく使われるクスグリの連続。
爆笑ネタといえる。
それはそうと、この音源(83.7.17)のマクラでしゃべっている、枝雀さんじしんのこどもの頃のエピソードが、ホロリとくるいい話で好きだ。
戦後、物資の乏しい時期、前田達少年(枝雀さんの本名)とお姉さん、おかあさんの三人で、ひとつの小さな饅頭をわけあって食べた。 ちいさな饅頭のかけらをかじって、飲み込んでしまうとそれでオシマイだから、口の中でいつまでもローレローレ、ローレローレと転がす・・・。
笑わせながら、「情」のあたたかさを感じさせる手腕はさすが。
この噺のサゲは単純なだけに、ここでばらしてしまうのは気がひけるが、ちょっとだけヨ。
始末の極意を伝授するために、庭につれていかれるアホ。
庭の木の枝にかけた梯子をつたって、枝に両手でぶらさがりなはれ。 はい。
梯子をはずされて、全体重を両手にあずけるかっこう。
これから始末の極意を伝授する。
まず、左手を離しなはれ。 ハナチマシタ(離しました)。
こんどは、右手の小指を離しなはれ。 ハナチマシタ。
つぎは薬指を・・・。 く、薬指ですか、ハナチマシタ。
たかたか指(中指)を。 ハナチマシタ。
・・・と、さいごに親指と人差し指だけで枝にぶらさがるアホに向かって、こんどは人さし指を離しなはれ。
そ、そればっかりは。 できないか。 できまへん。
よう離さんか。 これっばりは離せまへん。 ・・・
勘のいい方なら、これでオチ(始末の極意)がわかるはず。
ここまでにしておこうかな。
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