ひさしぶりに、中島みゆきのベスト・アルバムをひっぱりだして聴いた。
中島みゆき 『 Best Selection II 』
PONY CANYON 1992年 PCCA-00360
聴きなれた歌ばかりだが、あらためてその歌詞に感心した。
中島みゆきは詩人だと思う。
曲も歌唱も好きだが、ちょっとやそっとで真似のできない、どきっとするような歌詞がいったいどこから生まれるのか。
「黄砂に吹かれて」 という歌が収録されている。
1989年、工藤静香に提供した歌である。
(工藤静香という歌い手も、ぼくはきらいではない。いつも淋しそうだったが、キムタクと結婚してよかったと思う。いま、幸せかどうかは知らないが。)
きょう、中島みゆきが歌うこの歌を聴いてすごいなと思ったのは、つぎのような部分だ。
♪ あなたよりやさしい男も 砂の数ほどいるのにね ・・・
どこがすごいのかって?
ありきたりの歌詞じゃないか、というご意見もあるだろうが、ぼくは 「星の数」ではなく「砂の数」ということばを紡ぎだすところが、凡庸じゃないと思うのだ。
まあ、「黄砂」だから、「砂」なんだろうけど、こんな歌の世界はなかなか作れるものではない。
平凡なことばを使って、非凡な世界をイメージさせる歌が、ぼくは優れた歌だと思う。
ムズカシイことばを無闇につかった歌詞を、ぼくは好まない。
こどもでも知っていることばを組み合わせて、大人の想像力をかきたてる歌がいい。
前川清に提供した 「涙 -Made in tears-」 という歌もいい。
♪ メッキだらけの けばい茶店の隅っこは
雨やどりの女のための ・・・
「けばいサテン」 なんて若者ことばを、こんなに効果的に使えることに驚く。
前川清による歌唱も聴いたが、やはりいいのだ。
前川清という才能に、中島みゆきの楽曲のちからが加わった相乗効果だろうか。
あまり引用すると、著作権法に触れるのだが(もうじゅうぶん触れてるかなぁ・・・)。
ちなみに、著作権法を遵守するなら、こういう場合はJASRACというところに届けて、お金を払わなければいけない(らしい)のだ。
「with」 という歌のなかの、つぎの部分にもどきっとした。
♪ 誰だって旅くらい ・・・
でも、ひとりきり泣けても
ひとりきり笑うことはできない ・・・
このベスト・アルバムのなかで、ぼくがいちばん好きなのが 「歌姫」 だ。
曲調もアレンジもいい。
♪ 歌姫 スカートの裾を
歌姫 潮風になげて
夢も 哀しみも 欲望も 歌い流してくれ
ここでも、「洗い流す」ではなく「歌い流す」という、ちょっとだけひねったことばの使い方がみごとだ。
「歌姫」 は中島みゆきという歌い手にオーバーラップする。
ちょうど、山崎ハコの「歌いたいの」という歌が、山崎ハコの姿と重なるように。
中島みゆきは、まさに「歌姫」と呼ぶにふさわしい、同時代のありがたい歌い手だ。
ぼくに勇気をくれる・・・。
【収録曲】
時代 / トーキョー迷子 / 涙 -Made in tears- / 春なのに / 黄砂に吹かれて / まつりばやし / シュガー / やまねこ / with / Maybe / あした / 歌姫 / 世情
「世情」 というカタイ内容の歌以外は、どれも好きだ。
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