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2007年1月13日 (土)

【読】勢古浩爾さんの三冊目

ひさびさの読書日誌。
長ったらしいので、興味のない方は読み流していただきたい。

年があけて最初に読みおえた本がこれ。
Seko_kouji2_1勢古浩爾 『自分をつくるための読書術』
 ちくま新書 134 1997.11 \680(税別)
― カバーから ―
<「自分」をつくるということは、割合しんどいことである。 そんな思いまでして、しかもどんな保証もないのに、なぜ「自分」をつくらなければならないのか。 いったいなんの得があるのか。 理由は簡単だ。 「自分」をつくらないで生きていくことは、もっとしんどいからである。>

このての読書案内が好きなので、おもしろそうだなと思って読みはじめた。
なかなか刺激的な内容である。
冒頭、<はじめに ――「自分」をつくるとはどういうことか>から、意表をつくようなことが書いてあり、うなってしまった。
<人間の気質や性格(人間性)は、そのほとんどが三歳までにできあがってしまうから、それ以降どんなに変えようとしても無駄である、という考えがある。 悪あがきはやめなさい、というわけでもあるまいが、この三歳決定論に関しては、わたしも基本的には信じるほかないという気がする。 しかし、だから自己形成へのあらゆる意思や試みは無効であるという諦観にわたしは同意しない。 もしも自分で「自分」をつくることができないのなら、そんな「自分」にひとは責任をとる必然性がまったくないからである。
(太字は原文のまま)

全6章のタイトルをあげておく。
この章題に勢古さんの考え方がよくあらわれていると思うのだ。
各章の末尾に、ブックリストがあり、勢古さんの推薦書があげられている。
そのなかで、ぼくが興味をもった本も書いておこう。
(読んだことのある本も、いくらかあるが、もういちど読んでみようかと思う)

第1章 「世間」を生きぬくための読書 ~あらゆる形式を疑え~
阿部謹也さんの「世間」論からはじまるところが、ぼくにはうれしかった。
■ブックリストから■
『無名人名語録』(永六輔/講談社文庫)
『アイルトン・セナ日本伝説』(松本洋二/新潮文庫)
『この国のかたち(四)』(司馬遼太郎/文春文庫)

第2章 「弱さ」を鍛えるための読書 ~一冊の本は決定的に発火する~
<学生時代、『共同幻想論』という本が薄暗い生協の本棚に平積みにされていたのを思い出す。ベストセラーだという噂は知っていたが、なにがキョードーゲンソーロンだとわたしは無視した。吉本隆明氏が何者かはまったく知らなかった。自慢じゃないが相当無知であった。・・・大学卒業後のある日、友人のNが「おまえなんか吉本があうんじゃないかなぁ」といった。かれの真意はわからなかったが、わたしはその日、はじめて吉本氏の本を買った。> という、勢古さんが出会った「衝撃的かつ決定的な一冊」は、吉本隆明さんの『情況』(河出書房新社)。
■ブックリストから■
『共同幻想論』(吉本隆明/河出書房新社、角川文庫)
『犠牲』(柳田邦男/文藝春秋)
『夜と霧』(V・E・フランクル/みすず書房)

第3章 「論理」の力をつけるための読書 ~読むなら考えよ考えぬなら読むな~
論理(論理的な考え方)はたいせつである。しかし、論理の限界点には<理不尽>がある。・・・と勢古さんは言う。
<「自分」をつくるうえで論理の重要性はいくら強調してもしすぎることはない。だが論理だけでひとを感動させることはできない、というのもまた事実である。論理がその力をもつためには、論理に根性がはいっていなければならない。>
この章で引用されている、吉本隆明さんの次のことば(『カール・マルクス』から)は、ぼくも好きだ。
<市井の片隅に生まれ、そだち、子を生み、生活し、老いて死ぬといった生涯をくりかえした無数の人物は、千年に一度しかあらわれない人物(註:カール・マルクスのこと)の価値とまったくおなじである。>
■ブックリストから■
『重力と恩寵』(シモーヌ・ヴェイユ/ちくま学芸文庫)
『敗北の構造』(吉本隆明/弓立社)
『ぼくならこう考える』(吉本隆明/青春出版社)

第4章 「理不尽」を生きるための読書 ~すべての本を軽蔑せよ~
■ブックリストから■
『悲しみの家族』(宮城賢/春秋社)
『岸辺のアルバム』(山田太一/角川文庫)
『冷い夏、熱い夏』(吉村昭/新潮文庫)
『人間の土地』『夜間飛行』(サン=テグジュペリ/新潮文庫)

第5章 「覚悟」を決めるための読書 ~わたしがルールブックである~
この本を通して、<自分さがし>などするな、ということが繰り返し言われている。
同様に<自分らしさ><人間らしさ>などという、口あたりのいい、それでいて何の意味もない言葉を痛烈に批判する。読んでいて爽快。
■ブックリストから■
『単純な生活』(阿部昭/講談社文芸文庫)
『神聖喜劇(全5冊)』(大西巨人/ちくま文庫)
『鹽壷(しおつぼ)の匙』(車谷長吉/新潮文庫)

第6章 「自分」をゆさぶるための読書 ~自分に関係のない本などない~
著者・勢古浩爾さんは、若い頃(およそ30年前)、ほぼ一年をかけてヨーロッパ、中近東、アジアを旅し、そのときに持っていた本は、サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(ペーパーバックの原書)一冊だけだったという。
■ブックリストから■
『昭和精神史』(桶谷秀昭/文春文庫)
『ねむれ巴里』(金子光晴/中公文庫)
『東南アジアを知る』(鶴見良行/岩波新書)
『深夜特急(全6冊)』(沢木耕太郎/新潮文庫)
『望郷と海』(石原吉郎/ちくま学芸文庫)
『広島第二県女二年西組』(関千枝子/ちくま文庫)
『泥まみれの死 「沢田教一写真集」』(沢田サタ編/講談社文庫)
『大地の子(全4冊)』(山崎豊子/文春文庫)
『城下の人』『曠谷の花』『望郷の歌』『誰のために』(石光真清/中公文庫)
『生きることの意味』(高史明/ちくま文庫)

以上です。 ああ、しんど。
もちろん、ぼくには、こんなにたくさん読めやしないが、何冊かは手に入れて読んでみたい、あるいは再読したいと思ったのである。
この新書は、良質のブックガイドであり、骨のある自前の「思想」が語られている一冊。

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コメント

自分が読んだなかでのおすすめ
『昭和精神史』(桶谷秀明 → 秀昭/文春文庫)
『城下の人』『曠谷の花』『望郷の歌』『誰のために』(石光真清/中公文庫)

投稿: uji-t父 | 2007年1月14日 (日) 10時11分

>uji-t父さん
ありがとう。
誤字をなおしておきました。
石光真清の四部作、あなたにすすめられて持っていますが、一冊目しか読んでいないような気がします。
いま、この四冊はもんさんのところに行っています。

コールスロー、試してみました。
簡単でいいね。

投稿: やまおじさん | 2007年1月14日 (日) 10時58分

柳田邦男「犠牲」阿部昭「単純な生活」フランクル「夜と霧」山田太一「岸辺のアルバム」吉村昭「冷たい夏、暑い夏」沢木耕太郎「深夜特急」沢田教一「泥まみれの死」高史明「生きることの意味」など、かなり私の愛読書と共通項があります。この本は私には是非必要なものかもしれません。

投稿: 玄柊 | 2007年1月18日 (木) 08時26分

>玄柊さん
この本もおもしろいですよ。
読書論というか人生論というか。
阿部昭『単純な生活』という題名を見たとき、即座に玄柊さんのブログに書いてあったことを思いだしました。
『深夜特急』は、ぼくにとっても忘れられない本です。

投稿: やまおじさん | 2007年1月18日 (木) 20時38分

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