【読】勢古さん三冊
勢古浩爾さんのPHP新書三冊。
『「自分の力」を信じる思想』 (PHP新書 169) 2001/9
『おやじ論』 (PHP新書 242) 2003/3
『ああ、自己嫌悪』 (PHP新書 370) 2005/10
他にもまだ出版されている著作があるかもしれないが、ぼくがみつけたものはこれだけ。
新書ばかりである。
この人は、ハードカバーの大げさなつくりの本を好まないのかもしれない。ペーパーバックが似合っている。
この人は信頼できるな。
たとえば、次のような言葉が、(ぼくにとって)その裏づけだ。
<現在、最も真摯に人生の意味を問いつづけている作家は、五木寛之を措いてほかにはいない。 顔が美形だから、作家の余技と見られがちだがかれの人生論は信用ができる。 特徴は「暗さ」である。 そこがまたいい。>
<波乱万丈とか人生は楽しまなきゃ損だ、とか言っているやつらの考えに対置するには、この「みっともなくても生きる。苦しくても生きる」というのは有効である。 「人間の人生」を受け入れよ。 そのなかで翻弄される「自分の人生」もまた受け入れよ、と五木は言っている。 受け入れて、とにかく「生きる」ことだ、と。>
― 『ぶざまな人生』 洋泉社新書y 第六章 P.211~ ―
「人間の人生」「自分の人生」とは、こういうことだ。
(おなじ『ぶざまな人生』 第一章から)
<ひとは「人生」というものがどこかにある運命のように語る。 なんでも生じ、なんでも入る器のように。 「それが人生」だ、というように。 そのような「人生」はあるのか。 ある。 それが「人間の人生」だ。 自分のちっぽけな意思など翻弄してしまう「人生」である・・・(中略)。
そのような「人間の人生」に抗いながら、なおも自分の意思で生きようとするのが「自分の人生」である。 その必死さが、健気ともぶざまともなる。 これ以外にあるほかない人生は、この「ぶざま」以外に生きることのできなかった人生である。>
部分的な引用なので、わかりにくいかもしれないが、ぼくは大きくうなずくことができる。
吉本隆明さんについて、こんなことばも書いている。
<若くして胸に刻んだ言葉は、ひとつである。 日々の生活は平凡で退屈でくそおもしろくもない、という考えはよくありがちな根本的な錯誤で、そのような生活のなかにこそ波瀾も万丈も修羅もあるのだ、という吉本隆明の言葉である。 (中略) もし真に平凡な人生というものがありうるなら、それは理想の人生と言っていいのではないか。 わたしは「平凡」も「ふつう」も軽蔑しない。>
「喝!」
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コメント
昔、20代の頃、講談社に関係の深い30代のライターに「僕は五木が好きなんです。影響を随分受けてきました」と言ったことがあります。先輩として魅力のあった彼は「五木ねえー。吉本の存在に比べると何者でもないよ」という答えが返ってきました。勢古さんの言葉を読み、この時の会話を思いだしました。彼はその後どうしているか、知りませんが、作家として名を聞いた事もありません。しかし、今日のやまおじさんのエッセイは、いろいろなことを思わせました。
投稿: 玄柊 | 2007年2月 3日 (土) 19時24分
>玄柊さん
こういうことを言う人はいますね。
勢古さんに軽く撃沈されそうな・・・。
ぼくは勢古さんの著作をうまく紹介できませんが(まとめる力がないので)、何がいちばん大切なことか、ということを教わりました。
投稿: やまおじさん | 2007年2月 3日 (土) 20時03分
勢古さんの著書に『結論で読む人生論――トルストイから江原啓之まで』(草思社)というのがあります。
下のサイトで「立ち読み」ができます。
http://www.soshisha.com/book_read/htm/1498.html
投稿: やまおじさん | 2007年2月 3日 (土) 21時24分
初めまして。僕は二十歳の勢古ファンです。勢古さんの本全部とはいきませんがほとんど持ってます。勢古さんからは吉本さんや五木さんの影響も与えて貰って、読んでいます。
『生きていくために大切な言葉 吉本隆明74語』は傑作ですね。これからも勢古ファンでいつづけます。
投稿: 神崎 | 2007年2月 7日 (水) 07時08分
>神崎さん
いらっしゃい。コメントありがとうございます。
『生きていくために大切な言葉』という本は、ずいぶん前に読んでいたのですが、そのときは勢古さんという人がどんな人か知りませんでした。
なかなかユニークな吉本隆明論でした。
というか、吉本語録として面白かった。
神崎さんのブログも拝見しました。
気が向いたら、またいらしてくださいな。
投稿: やまおじさん | 2007年2月 7日 (水) 21時36分