【読】人生論
よりによって、こんな気恥ずかしいタイトルをつけることもなかろうに・・・。
いや、ほんと、恥ずかしい。
それでも、中学生の頃にちゃんと読んでおけばよかった、と思う本が多い。
その一方で、中学生の頃ならとうてい理解できなかっただろうな、と思うものも多い。
「人生論」である。懲りずに、しつこく、勢古浩爾さんの本を読んでいる。
『結論で読む人生論』
―トルストイから江原啓之まで―
(草思社 2006.5.31)
なかなか面白い本なのだ、これが。
「ひとは人生でふたつの台地を登る」 という譬え(たとえ)がいいな。
いかにも「腑に落ちる」表現で、好きだ。
<ひとは人生でふたつの台地を登る。 年齢という台地と、社会的位置という台地だ。 だれもがそのふたつの台地を登り、長い平坦な道を歩いてから、坂を降りてゆく。 台地の高さも傾斜も形状もひとによってちがうだろう。 登るときの人生、歩むときの人生、下降するときの人生は、それぞれ異なるだろう。・・・> (第1章 賢者かく語りき P.15)
わが身に引き寄せてみると、そろそろ下り坂が近いのかもしれない。 見えてきた、と言えばいいのか。
あれこれ悩みながらも、日々を生きていくのだろうな。
こんなくだりもある。
幸田露伴の 『努力論』 を引き合いにして――。
<努力が「吾人の未来を善くするもの」ということを、いまの人間たちは信じられなくなってきているのだろう。 努力してもしなくてもどうせ将来がだめなら、努力なんかしても無駄だ、ましてや努力した挙句に会社に捨てられるではないか、というわけだ。 大体、努力しろというのなら、その対価となる保証をよこせ、というのである。 なにがちがうのか。 人生観がちがってきているとしかいいようがない。 自分の力で台地を登っていこうとする人生観と、台地よおまえが低くなれ、ならないなら他に自分だけの気楽な丘を作ればいいんだ、という人生観のちがいである。> (第5章 まじめな人生はつまらないか P.152)
これまで、ぼくは、人生を山登りに譬えて考えることが多かったが、ちがったな。
山登りは、遠大な目標をたてて(とりあえず頂上が目標になる)、そこを目指してゆっくりゆっくり、ペースを乱さないように一歩一歩・・・という感じだが、さて、頂上に着いたら下山ということになり、それが登りとおなじぐらい長い道のりなのだ。
そもそも、人生の目標など立てたこともないし、生きていくうえで、ゆっくりと下り坂ということもないだろう。
いつまでも、頂上でのんびりしていたいものでもあるし。
台地、と考えると、なるほどと思う。
台地の上をうろうろしながら、気がついたら台地の端まできている、後はその台地を下ってゆく。 そう考えることにしようか。
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コメント
古本屋では時々勢古さんの本を見つけようとしていますが、なかなか、目に入りません。そのうち見つかるでしょう。中島みゆきのCDは、幾つか仕入れました。
投稿: 玄柊 | 2007年2月21日 (水) 23時18分
面白かったですよね、『結論で読む人生論』。こういう本が早く欲しかったです。
吉本氏の≪結婚して子供を産み、そして、子供に背かれ、老いてくたばって死ぬ、そういう生活者をもしも想定できるならば、そういう生活の仕方をして生涯を終える者が、いちばん価値ある存在なんだ。≫には若い僕には半分しか納得できませんでした。早く老け込んで心から実感したいです(笑)
投稿: 神崎 | 2007年2月22日 (木) 19時03分
>玄柊さん
ちょっと大きめのBOOK OFFでは、ときどき見かけます(新書コーナー)。
ただ、おすすめのものがあるかどうか・・・。
お買い求めの際は、内容を見てからのほうがいいかと思います。
ぼくも、すべておすすめというわけでもありません。
>神崎さん
読んでいただき、ありがとうございます。
吉本隆明さんの言葉は、あたりまえのことを言っているだけなのですが、これがあたりまえに思えない時代なのかな、と思います。
勢古さんの基本姿勢も、吉本さんと同じですね。
投稿: やまおじさん | 2007年2月22日 (木) 21時13分