【読】今週の一冊
今週前半は、香月泰男さんに関する本(立花隆 『シベリア鎮魂歌――香月泰男の世界』 文藝春秋)を読んでいたが、第一部(再録「私のシベリヤ」)までで中断。そうこうしているうちに、いい本をみつけた。
『香月泰男 シベリア画文集』
(山口県立美術館/監修・中国新聞社/発行・2004年)
AB版、123ページ。
週刊誌大で写真がきれいだ。
シベリア・シリーズの全作品が、写真と香月じしんの文、それに山口県立美術館学芸員による解説で紹介されている。
これで1500円(税別)という価格が信じがたい。
図書館から借りてきた大型の 『シベリヤ画集』 よりも図版がきれいだ。
もう一冊、新書を読んだ。
しつこいようだが、またも勢古浩爾さんの本。勢古浩爾 『白洲次郎的』 洋泉社 新書y 124 2004.12
白洲次郎、正子夫妻が、いまちょっとしたブームらしい。
この二人について、ほとんど知らないし、白洲次郎という人にもさほど関心はない。
が、この本はそれなりに面白かった。
「それなりに」なんて、著者に失礼かもしれないが、まったく期待せずに読みはじめたのである。
勢古さん流の人生論である。 一本、筋が通っているのだ。
この本の後半に、とつぜん出てくる大工の棟梁の話がよかった。
三浦綾子さんの 『岩に立つ』 という小説の主人公、鈴木新吉という実在した大工の棟梁の話だ。
白洲次郎より、ぼくはこういう人にひかれる。
勢古さんはこう書いている。
<小説のなかでなら見たことがあるが(おもいだせないけど)、現実に、鈴木新吉のような真っすぐな人間をわたしはこれまでにただのひとりも見たことがない。 石光真清を生み、白洲次郎を生み、鈴木新吉を生んだ明治は、やはりえらい。>
同感だ。
身のまわりから明治生まれの人が姿を消したが、ぼくの知っている明治生まれの人たち(無名の人たちばかりだが)も、みな、気骨があり筋が通っていたと、今になって思う。
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コメント
三浦綾子の「岩に立つ」というタイトルを初めて知りました。探してみます。白洲夫妻は私はかなり興味のある人です。明治、たしかに魅力のある時代です。
投稿: 玄柊 | 2007年3月10日 (土) 00時29分
>玄柊さん
三浦綾子『岩に立つ』講談社文庫
1984/10/15 定価(税込)540円
http://www.kodansha.co.jp/
三浦さんは、この人のことを「男の中の男」と形容しているそうです。三浦夫妻の自宅を建てた棟梁で旭川に住んでいたらしい。
ぼくも読んでみようかな、と思うような本です。
投稿: やまおじさん | 2007年3月10日 (土) 07時43分
『白州次郎的』、僕の中では★五つです。
とっても面白く読めました。
『岩に立つ』も読みました。あれも面白かったです。頭領の一人語り、と言った感じ。
僕も明治に惹かれる一人です。もう近くには明治の人がいないので大正生まれの人に取材したりしてます。僕の祖父ですけど。時代が進むにつれて何かが後退していく感じですね。残念です。
投稿: 神崎 | 2007年3月10日 (土) 11時40分
>神崎さん
勢古さんの本は、どれも面白く読めるのですが、ぼくにとってこの本は★四つぐらいかな。ちくま新書の三冊が★五つ。
同じ本でも、人によって受けとり方がちがうのがおもしろいですね。
勢古さんがすすめる本は、どれも興味ぶかく、『岩に立つ』も読んでみたいと思います。
投稿: やまおじさん | 2007年3月10日 (土) 21時38分