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2007年5月29日 (火)

【読】日本の軍隊

こんな本を読んでいる。
Nihon_no_guntai『日本の軍隊 ―兵士たちの近代史―』
 吉田 裕 著 岩波新書816 2002.12.20
<1873年の徴兵令制定以来、文明開花の推進力となり、全国に近代秩序を浸透させる役割を果たした日本の軍隊。 それが、十五年戦争期のような反近代的で精神主義的な軍隊になってしまったのは、なぜか。 日本の民衆にとって、軍隊経験とは、どんな意味があったのか。 豊富な資料をもとに「天皇の軍隊」の内実を解明する。>

岩波新書、著者は一橋大学大学院の教授、とくれば、学者っぽい堅苦しい内容かと思っていたが、これがなかなか面白い。
旧日本軍を構成していたのは、階級でいえば、将官(大将、中将、少将)、将校(佐官、尉官)、下士官(曹長、軍曹、伍長)、そして兵(兵長、上等兵、一等兵、二等兵)等であるが、戦場の最前線で実際に戦い、命を落としたのは圧倒的に兵卒(そして下士官)である。
その兵卒の視点から日本の軍隊の姿を考察しているところが、この本の特徴だろう。

旧日本軍といえば、負のイメージが強く、戦後に生まれ育った私には、過去の遺物という思い込みが強かった。 だが、この本を読むと、そんな画一的な見方では捉えきれない面もあったことがよくわかる。

例えば、序章の扉に引用されている加太こうじの次の文章など、はっとするものがあった。

<(前略)私たちの仲間が、ときとして、軍隊生活や戦争の時代をなつかしむのは、ひとつには若い頃の美化された思い出にひたるからだが、その根柢には、軍隊生活より、もっとひどい浮世の苦労や、人前に出られる服装すらない貧乏や、人間を地位や学歴で価値づけて実力では評価しない周囲があるからだと思う。 軍隊にもそれはあるが、生活上の苦労とは結びついていない。 私たちの仲間には、軍隊へいって、はじめて、三度の食事の心配と、寝るところの心配をしないですむようになった者がいるのだ。>
(加太こうじ 『軍歌と日本人』 徳間書店、1965年)

本筋からはずれるが、こんな興味ぶかい話もある。
日本各地から兵を集めた軍隊では、兵士たちに標準化された軍隊教育を受けさせるために、言葉の標準化が必要だった。
そこで生まれたのが、「兵語」(兵隊言葉)で、その中には、戦後の日本語にも定着したものが多いという。
その事例としてあげられている言葉がおもしろい。
「残飯」「点検」「たるんでいる」「ボサッとしている」「処置なし」「ハッパをかける」「気合をかける」「割喰った」「適当にやる」等々。
(大久保忠利 「生きている「兵隊コトバ」」、『思想の科学』 第五巻第一号、1949年)

いやはや、驚いた。
知らないことの、なんと多いことか。

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コメント

また刺激的な本の紹介ですね。我々の世代は父が出征しているので、話はよく聞きました。私にはとても耐えられる場所ではありませんが、もし、そこへ行くことになっていたらどういう行動をとっただろうとよく考えます。そこを、安泰の場と思う人もいたのは事実でしょう。現在も、自衛隊を職場としている人がいるのですから。いろいろと考えさせられました。

投稿: 玄柊 | 2007年5月30日 (水) 08時40分

>玄柊さん
この本は一読の価値があると思います。
旧日本軍のことを、あまりにも知らなかったなと、思い知らされました。
私の父は、学徒動員で海軍航空隊の少尉をちょっとだけやったようです。
軍帽とおもちゃのような刀剣が家にありました。
父が生きているときに、もっといろんなことを聞いておけばよかったと、今になって思います。
自衛隊には、業者の一人として仕事で行っていたことがあります。
あたりまえですが、階級がものを言う世界です。
事務官という人たちもいて、演習がなければ普通の企業人のような仕事をしていました。

投稿: やまおじさん | 2007年5月30日 (水) 20時53分

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