【読】読了『満州国演義』
船戸与一 『満州国演義』 2巻を読了。
重量感のある小説だった。
昭和3年(1928年)張作霖爆殺事件から、 昭和6年(1931年)上海事変まで、ほんの数年のあいだのできごとが時代背景。
中国大陸東北部は、謀略がうずまいて混沌としていた。
登場人物の多彩さもあって、めまいを感じた。
こってりした中華料理をいやというほど食べたような、そんな読後感。
あらためて思ったのは、船戸与一の筆さばきは、とても「映像的」だなということだ。
『蝦夷地別件』でも感じたのだが、登場人物が間近にいて、その息づかいが伝わってくるような錯覚にとらわれる。
ひさびさに小説を読む醍醐味を堪能したのだった。
週刊誌(週刊新潮)連載(2005.7.14号~2006.9.14号)をベースに、大幅加筆したもの。
続編(第三部)は満州国建国宣言からはじまる、との予告が巻末にあった。 楽しみにしたい。
― 後記から ―
(前略)筆者は昭和十九年生まれで飢餓体験はあっても戦争の記憶はもちろん中国で九・一八と呼ばれる満州事変前後の事情となるともはや遥かなる過去でしかない。 したがって執筆にあたってはすべて資料に頼った。 小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない。 これが本稿執筆の筆者の基本姿勢であり、小説のダイナミズムを求めるために歴史的事実を無視したり歪めたりしたことは避けて来たつもりである。 (後略)
なかなかかっこいい宣言なのだ。
巻末にあげられた参考文献一覧も興味ぶかいが、とてもこんなに読めないなというほどのボリューム。
いつもながら、船戸さんのパワーに脱帽。
また、何度もあげるが、新潮社のサイトに載っている著者インタビュー記事がおもしろい。
[船戸与一『満州国演義』刊行記念]
だれも書いたことのない満州を
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/462302.html
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