【読】宮本常一「私の日本地図」
返却期限が明日になってしまった。 延長しなくちゃ。宮本常一 『私の日本地図 3 下北半島』
同友館 昭和42年11月10日 初版
今日から読みはじめた。
先日読んだ 『10 武蔵野・青梅』 もよかったけれど、この『下北半島』編は旅先での話がいい。
宮本常一の人がらがよく伝わってくる。
「下北へのはじめての旅 (昭和15年12月)」
宮本常一がはじめて下北半島を訪れたときのエピソードでこの本ははじまる。
恐山にのぼり、暗くなったので泊まるところを探していた。
恐山の湖のほとりに家があり、火が見える。近付いていくと犬が何匹もいて吠えはじめたのでおそれをなして菩提寺の方へあるきはじめた。 そこにも板葺の家があって火の光がもれていたので、行ってみると店屋で、婆さんがひとりいる。
泊めてもらえまえかと頼むと、布団がないので向こうにある硫黄採掘所で泊めてもらえと言われる。
硫黄採掘所は、はじめに訪ねた犬の吠えていた家だったが、荒くれ男が六、七人いて、食うものがないからだめだと言う。
結局、婆さんの店屋で食べさせてもらってから、この硫黄採掘所に泊めてもらう。
そうか、宮本常一という人は、こういう旅をしていたんだ。
続きは、この本から引用する (長いので、適当に改行)。
<荒くれた男が六、七人いろりのそばにいる。 そして一人の女を中にして首を抱いている者、腕をもっているもの足をひざにのせている者などいろいろである。 女のからだにさわっているだけで心が安らかになるのであろうか。
私はリュックサックをおろして店へいって夕飯をたべさせてもらい、また採掘所へいっていろりのそばへ寄った。
生国姓名を名乗り、旅の目的をはなすと、この鉱夫たちは岩手の者が多かったが、私の郷里の山口県の者もおり、女もたしか山口県の者であった。 炊事婦として来ているのである。 そこで話は鉱山のことになった。 こういうところではノートを出すのはいけない。 自由に話しあうのがよい。 話は実に面白い。>
<そのうちみんなで温泉へゆこうということになった。 提灯に火をともして菩提寺のまえの浴室へいく。 湯はあふれ流れている。 みんなでいっしょにはいって、今度は彼らが私にいろいろ聞く。 金もうけでなしに古いことをしらべてあるく私にひどく感心してくれる。> ― 宮本常一 『私の日本地図 3 下北半島』 P.12~13 ―
・・・まさに、「旅する民俗学者」 と呼ばれた宮本常一の面目躍如といったところか。
写真で見る宮本さんの顔は、どれも人なつっこい笑顔である。
好きだなあ、こういう人。
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