【読】小説・菅江真澄
これが、じつに面白い。
中津文彦 『天明の密偵 小説・菅江真澄』 (文藝春秋 2004年)
半分ほど読んだが、はたと膝を打つことが多いのだ。
実在の人物・菅江真澄をモデルにしたフィクションではあるが、当時の時代背景がていねいに描かれている。
老中 田沼意次が専横をきわめた時代、浅間山の大噴火(天明3年・1783)、天明の大飢饉(天明3~8年)、青嶋俊蔵、最上徳内らによる蝦夷地探索、・・・そうか、菅江真澄が生きたのはそういう時代だったのか。
蝦夷地の「お試し交易(試み交易)」といえば、1789年(寛政元年)には「クナシリ・メナシ」の反乱が起きている。
弾左衛門も登場する。 夷人(アイヌ)のイコトイも出てくる。
『蝦夷地別件』(船戸与一)や『浅草弾左衛門』(塩見鮮一郎)の時代と、ぴったり符号するのだ。
これまで関心をよせてきたいろいろなものが、この小説でいっきに繋がり、200年以上前の江戸時代のダイナミックなうねりが、目の前にひろがってくる。
― 作者あとがきから抜粋 ―
菅江真澄の名は、江戸後期の民俗学者としてつとに有名である。 生涯を旅にすごし、各地の風俗、民俗などを日記体で詳細に書き残した。・・・
真澄は、三十歳ぐらいのときに郷里を後にして生涯の旅に出るのだが、プライベートなことは何一つ明かさずに旅を続けており、日記にも綴っていない。・・・
この旅に出た目的を「日本中の古い神社を拝んで回りたいと思ったからだ」と真澄は述べている。 だが、どうやら蝦夷地(北海道)に渡ろうと決意していたふしが窺われる。 旅に出た当時は、折悪しく天明の大飢饉の最中だったし、信濃路を辿っていたときには浅間山の大爆発が起きたりした。 このため、ひどく困難な旅を強いられたのだが、それでも蝦夷地に渡る決意に揺るぎは見られない。・・・
当時の蝦夷地に、何かあったのだろうか。 そう思って調べてみると、意外な史実が浮かび上がってきた。 田沼意次が老中として絶大な権勢を誇っていた時代で、蝦夷地に巨大な陰謀を巡らしていたことがわかったのだ。 このことは、次の松平定信による政権下で抹殺され、歴史書にも登場しない。・・・
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