【楽】【読】アルバータおばさん(続)
この画像を何度も掲載したが、いい本だった。
『人生を三度生きた女
“魂のブルース” アルバータ・ハンターの生涯』
近いうち、図書館に返さなきゃいけないので、アルバータおばさんの晩年の言葉を書き写しておこうと思う。
この本の終章には、含蓄に富む言葉がたくさんある。
(第九章 靴をはいたままで 89歳)
「アルバータの口癖は、人は年とって死ぬのではなく、生きて、そして死ぬのだということでした。 この二つはたしかに全然ちがいますものね」 (写真家 バーバラ・ボードニック)
「年をとりすぎている、ってことはないんだよ。 年をとるってことは、たんに時間が重なることにすぎない。 あんたがしゃんとしてれば、考えることができれば、働く意思があれば、働いて他の人の役に立ったらいいんだ。 それには年とりすぎてるなんてことはない。 それには自分自身の強い意志が必要なだけだよ。 ぜったい働き続けるという強い意思がね」
「死ぬときは、靴をはいたまま死にたいもんだ。 靴ひもをすこしゆるめることはあっても、ちゃんと靴をはいて、地面に足を踏んばったままで死にたいよ」
「人が死ぬと、花を贈らなければとみんなが言う。 あたしが死んでも花なんか買わないでおくれよ。 そんな金があったら、人にサンドウィッチでも買ってあげな」
「いい人はたくさんいるのに、あたしのように、あたしのことを考えてくれる人に出会う人はめったにいないからね。 みんな一人ぼっちなんだよ。 だからあたしはときどき、他の人たちのために泣いてるのさ」
(アルバータは人種差別がいまだにあることは悲しいことだと語った)
「まだ差別がなくなってはいない。 いまだってところによっては、黒人が歓迎されないところがある。 言葉遣いや態度ですぐわかる。 まだまだたくさん偏見があるよ。 親が偏見をこどもに教える。 するとそのこどもが友だちに広める。 またその人のこどもが……というように偏見は広がっていくんだよ。 白人のこどもたちの中には、昔、親たちが黒人に対してしたことをいまだにする子がいる。 皮膚の色がちがうものに対する憎しみや軽蔑を表わさずにはいられないんだ。 彼らだってきっとそんなことはしたくないだろう。 親切にしたいだろう。 誰だって人を憎むのはいやなもんさ。 だけど、彼らは自分の考えというものを持っていないのさ。 悪い考えを持っている者の言う通りにするんだよ」
(アルバータはよくショーの最後に、こう言った)
「皆さんの中に、ここに来たときは辛い苦しい思いを胸に抱えていたけれど、あたしの歌を聞いて心が軽くなったという人がいたら、あたしの人生は無駄じゃなかったと思います」
アルバータの最期はこうだった。
<1984年10月17日、ニューヨーク市のペースメーカー研究所のキャロル・ライト=ヴォーンがアルバータに電話をかけた。 一カ月ごとに検診を受けに来ていたアルバータが、その月に限って姿を見せなかったからだ。 何度電話をしても電話は通話中の音を出した。 ライト=ヴォーンはアルバータの緊急連絡所になっていたハリー・ワトキンズに電話をかけた。/ハリーは自分で数回電話をしてみて、通じないためジェラルドに連絡した。 ジェラルドは自分の足でアルバータのアパートに向かった。>
※ ジェラルド・クックはアルバータの伴奏をつとめたピアニスト、晩年のアルバータにつくした。
<アルバータはベッドの向かい側のひじかけ椅子に、病院のパジャマにスリッパ姿で腕に頭をもたれかけて、死んでいた。 アルバータは母親が死んだときに買っておいたニューヨークのハーツデイルにあるフェーンクリフ墓地に埋葬された。>
【参考】
ちかごろは、ネットでさまざまな映像、音源が公開されている。
アルバータ・ハンターのカムバック後のライブ映像が公開されているのを発見した。
若いころの音源も聴くことができる。
YouTube Search Results for “Alberta Hunter”
http://www.youtube.com/results?search_query=Alberta+Hunter&search=Search
上の検索結果から…
1979年12月4日 THE DICK CAVETT SHOW (TV番組)
Alberta Hunter at age eighty-four
http://www.youtube.com/watch?v=v_1xUmRkzYk
Alberta Hunter at age eighty-four - Part Two
http://www.youtube.com/watch?v=rXH0XiTl4NQ
共演者はジェラルド・クック(p)とアーロン・ベル(b)だと思う。
Part Two には、ごきげんな演奏 "Sweet Georgia Brown" が収録されている。
カムバック時、アルバータは演奏者にドラムスを入れることを嫌っていた。
「ドラムはただ、バンバンとやかましいばかりで、歌もなにも聞こえやしない。 あたしは言葉を聞いてほしいから、ドラムはなしにしてもらうよ」 そう言って、ピアノとベースだけをバックに歌ったようだ。
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