【読】エミシ
だんだん面白くなってきたぞ。
高橋克彦 『火怨 北の燿星アテルイ』 (講談社文庫) 上巻の終盤にさしかかった。
8世紀、陸奥(みちのく)の蝦夷(えみし)たちが、ヤマト王朝の大軍と戦う話。
周到な準備をしたうえの大規模な戦いだ。
大伴家持や坂上田村麻呂の名前もでてきた。
この段階では、アテルイは、まだ田村麻呂と戦っていない。
藤原継縄(つぐただ)、大伴益立(ますたち)、紀古佐美(こさみ)らが率いる大軍を、謀略によって退け(西暦780年)、翌年、藤原小黒麻呂(おぐろまろ)を大将とする三万人の大軍を撃退した。
このあたりの戦(いくさ)の様子がじつによく描かれている。
この戦いの後、征東将軍藤原小黒麻呂の後を引き継いで陸奥按察使(あぜち)兼鎮守将軍として派遣されたのが、大伴家持(やかもち)だったという。
歌人として名高い家持だが、陸奥に派遣されたこの人物の七年間にわたる穏健政策によって、いっとき平穏な時代があったという記述は、とても興味ぶかい。
いぜんから東北の蝦夷(えみし)に関心があったが、これまでの断片的な知識がつながってきて、うれしい。
こんな本も持っていたのだが、これまでは読もうという気にならず本棚でねむっていた。
いまなら読めそうだ。
「知ることの楽しみ」 というものもあるのだな。工藤雅樹 『蝦夷の古代史』
平凡社新書 2001.1.21
工藤雅樹 『古代蝦夷の英雄時代』
平凡社ライブラリー 2005.10.11
工藤雅樹 1937年 岩手県生まれ
東北大学文学部史学科卒業
東北歴史資料館館長
主著 『古代蝦夷の考古学』『蝦夷と東北古代史』
『東北考古学・古代史史学史』 など
― 講談社 『日本全史 Japan Chronik』 から ―
古代国家と「蛮夷(ばんい)」
畿内に拠点をおく古代国家は、8世紀の初頭には、北海道と沖縄をのぞく日本列島をほぼその勢力下においたが、東北北部と九州南部には、なお中央とは異なる文化をもち、中央政府に容易にしたがわない人々がいた。 それが蝦夷(えみし)と隼人(はやと)である。 北海道には、やがて一部の地域でオホーツク文化という沿海州・樺太と関係のふかい文化がさかえるが、大半は蝦夷ないし蝦夷と同系統の人々が居住していたと考えられる。
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コメント
高橋克彦、最近やっと直木賞受賞作品を読みました。縦横無尽、かなりのスケールを描く人ですね。
ところで、図書館で借りただけだった「アイヌが生きる河」(北川大)萱野茂「アイヌの碑」などを手に入れました。今年は行けませんでしたが、来年こそ、二風谷へ行きます。
投稿: 玄柊 | 2007年10月19日 (金) 23時15分
>玄柊さん
高橋克彦という人をよく知らないのですが、たくさん本を出していますね。
直木賞受賞作『緋い記憶』も読んでみたいと思います。
この『火怨』は面白いですね。
いよいよ下巻にはいるところです。
玄柊さんが手に入れられた二冊は、私も感銘を受けた本です。
『アイヌの碑』は朝日文庫で読みましたが、古本市で単行本(1980年、朝日新聞社)も入手しました。
『アイヌが生きる河』には感動しました。
投稿: やまおじさん | 2007年10月20日 (土) 07時57分