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2007年10月16日 (火)

【読】時代小説のセリフ

時代小説、歴史小説を読む気がしないのは、登場人物のセリフがうそっぽいから。
おなじ理由でテレビの時代劇(NHKの大河ドラマなど)も、ほとんど見ない。

なぜ、いきなりこんなことを書いたかというと、きのうから読みはじめた小説が、まさにこの典型なのだ。

Takahashi_katushiko_aterui1高橋克彦 『火怨 北の燿星アテルイ』 (講談社文庫)
時代は8世紀。
舞台は陸奥(みちのく)。
登場するのは「蝦夷(えみし)」と蔑称された人々。
こんなセリフを吐くのだろうか、と、抵抗があったが、読み進むほど面白くなってきた。
(だから、この小説を貶しているわけではない)

しかし、なあ・・・。

「敵の使者が参ったと聞きましたが?」
「敵とは決まっておらぬ。 伊治(これはる)の鮮麻呂(あざまろ)どのの使いだ。 今の事態では皆が揃って使者の言葉を聞くがよかろう。 それでおまえを呼んだ」

「俺はおまえの胸の中にある蝦夷の心に我が命を賭けた。 おまえはまことの蝦夷となった。 だからこそ俺はこうして皆の前に居る。 それをむざむざと果てさせて、なんの蝦夷の結束ぞ。 親父どの! お考えくだされ。 力ばかりでは強大な朝廷軍には勝てぬ。 槍や刀に負けぬのは蝦夷の心しかござらぬ」  (高橋克彦 『火怨』)

「ござらぬ」 かぁ。 うーん、しらけるなあ。
ならば、どのようなセリフにすればよいのか。
(こっちまでヘンな言葉づかいになってしまう)

これはもう、船戸与一のように思いきって現代風に喋らせるしかないだろう。

「田沼意次も運がない。 そりゃもちろん図に乗り過ぎた。 しかし、失脚のもととなった打毀しは飢饉によるものだ。 凶作だけは人智の及ぶところじゃない」
「わかってないな、忠勝」
「何が?」
「松平定信のすごさを」  (船戸与一 『蝦夷地別件』)

何百年も前の昔の話し言葉は、現代の作者からは想像もつかないのだろう。
話し言葉に関しては記録もないだろうし。
時代小説、時代劇で苦労するのはよくわかるが、あまりにもパターン化されていないだろうか。

などと文句を言いつつ、『火怨』 を読んでいる。
阿弖流為(アテルイ)という青年(今はまだ18歳)が、なかなか魅力的なのだ。
それにしても、ボリュームがあるなあ。
文庫で上下巻各々500ページほど。

この小説を読んでみる気になったきっかけは、以前書いた。
2007年8月31日 (金) 【読】アテルイ
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_0061.html

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