【読】宮部みゆき 再読 (6)
宮部みゆき 『初ものがたり』 (新潮文庫)
私にしてはめずらしく、2日で読み終えてしまった。「回向院の親分」 こと、岡っ引きの茂七が主人公の捕物帳。
じつに感動的で、おもしろかった。
特上の時代小説。
『本所深川ふしぎ草紙』 でも、この茂七親分が脇役で登場していた。
同書の解説(池上冬樹)にこう書かれている。
<なお、本書で脇役として活躍する「回向院の親分」こと岡っ引きの茂七は、七月(1995年)に出たばかりの『初ものがたり』(PHP研究所)で主役をはっている。 そう、こちらはまぎれもない捕物帳スタイルで、快調な仕上がり、ことに興味深いのは、まるで池波正太郎の時代小説のように食べ物の話が出てくることで、これが池波と同じように、実に食欲をそそる料理ばかり。 作者に、鬼平のパスティーシュを書かせたら面白いだろうなあ、と思わせるほどで、もっともっと茂七シリーズを読みたくなる。>
(新潮文庫 『本所深川ふしぎ草紙』 解説 1995年7月)
『初ものがたり』 は、当初、PHP研究所から単行本が、その後、PHP文庫で文庫化され、さらに新潮文庫に収録されたもの。
新潮文庫には、宮部みゆき自身による 「新潮文庫のためのあとがき」 がある(解説はついていない)。
その中で、著者の宮部はこう書いている。
<(前略) 本書では、登場する様々な食べ物に、「ちょっと美味しそうだな」と感じていただければ、さらに幸せです。 蛇足ながら、作中に登場する料理は、みな、実際につくって食べることができるものです。
(中略) ご一読いただけましたら一目瞭然ですが、本作品集 『初ものがたり』 は、いかにも 「まだまだ続きますよ」 という体裁をとった作品集でありながら、事実上この一冊で作品の刊行が停まっているという、たいへん中途半端な形になってしまっているものですから、…(後略)>
(新潮文庫 『初ものがたり』 著者あとがき 1999年9月)
というわけで、いくつかの謎を残しながら終わっている小説。
主人公の茂七にからむように登場する稲荷寿司屋台のおやじや、「日道」と呼ばれる透視能力を持つ(?)十歳の坊やなど、その後どうなるのか気になるところだ。
とりあえず、宮部みゆきの時代小説再読は、いったん終わりにするつもり。
まだまだ何冊も用意してあるのだけれど、船戸与一が気になる。
【参考】
宮部みゆきに関しては、いろいろ研究書めいた本も出ている。
それほど、多作で、多様な顔を持った作家、ということなのだろう。『まるごと宮部みゆき』
朝日新聞社 2002年 朝日文庫 2004年
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022577657
『僕たちの好きな宮部みゆき』
宝島社 2003年 宝島文庫 2006年
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4796635564
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コメント
日本サスペンス大賞を受賞した『魔術はささやく』
を…ようやく買ってきました。
が…横浜へ行ったり…
会社で緊急事態が発生したり…
今週はこれから出張があったり…
練成会があったりと…
落ち着かず…すぐには読めないかもしれません。
でも…初めての作家なので楽しみです。
投稿: みゆう | 2008年1月29日 (火) 22時41分
>みゆうさん
ついに、宮部みゆきに行きつきましたか。
なかなか本を読むお時間がないようで、たいへんですね。
『魔術はささやく』ずっと前に読んだのですが、もう内容は忘れてしまいました。
面白いことは請合います。
投稿: やまおじさん | 2008年1月30日 (水) 21時49分