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2008年2月27日 (水)

【読】ミクロコスモス

石川英輔著 『大江戸 えねるぎー事情』 (講談社文庫)を、一週間ほどかけて読了。

Ishikawa_ooedo_energy_s文庫で300ページほどだが、活字が小さくて(8ポだろう)、老眼の私にはつらかった。
先週末から、わけあって仕事関係の調べものもしていたので、少しずつしか読めなかった。
そんな言いわけはともかく、とても刺激的な本だった。

巻頭、ミクロコスモスの話がでてくる。
ミクロコスモス(エコスフェア ecosphere 生命地球儀)。
これは何かというと、水と空気、それに砂と小石などを入れたガラスの容器に、小魚と水草とバクテリアを入れて密封し、外部から完全に遮断する。
外から入るのは、ガラスごしに入る光と熱だけという状態にする。

すると、光と熱のエネルギーによって、水草は炭酸同化を始めて酸素を発生し、魚はその水草を食べて生き続け、排泄する。
排泄物はバクテリアの栄養になり、バクテリアによって分解されて水草の栄養になる。

それぞれのバランスがうまく保たれていれば、この小さなコスモス(宇宙)は生命活動を続けられる。
ミクロの生態系である。
それぞれの量的バランスが適正に保たれれば魚は繁殖するが、増えすぎてエサや酸素が不足すれば、弱い固体が死ぬ。
死骸はバクテリアが分解して、小さな世界のバランスを回復する。
じつにきわどいバランスの上に成りたっている世界なのだ。

このミクロコスモスの中では、「無から有は生じない」。
生命現象をささえているのは、外からの光と熱の形で供給され続けているエネルギーである。

地球上の世界も、原理的には同じだと著者は言う。
もちろん、上のミクロコスモスよりもずっと複雑ではあるが、机の上に置くことのできるガラス容器よりもサイズが大きくて、生きている生物の種類が多いため、そのバランスの危うさが見えにくいだけである。

「細い糸が、いくらか太いロープに代っただけであって」、地球規模でも本質的には同じことをしている、ということだ。

ちょっと考えてみれば容易に想像がつくが、地球の未来は暗い。
「もう、どうにも止まらない」 状態だから、このまま資源を食いつぶし、生態系のバランスをくずして、これまで考えてもいなかった危機的な状況にいきつくはずだ。

もちろん、私とて、そんなことを願ってはいないのだが、もう、行きつくところまで行くしかないのかもしれない。
それが、「便利さ」 を追求してきた結末である。

巻末で、著者はつぎのように言う。
悲観的な調子ではないのが、救いではある。

(石油、石炭、天然ガスなどの、化石燃料を消費し続けることについて)
<ただ蓄積を消費しているだけであり、いわば親の残した財産を派手に喰いつぶしながら贅沢な生活をしているドラ息子のような状態なのだ。 いずれは、これほど便利な生活ができなくなる日が来ることを覚悟する方が自然だろう。>

<だが、それならそれでもかまわないのではないかと、私は思う。>

<人間の幸福が、本当に便利さの程度に比例している証拠はないし、便利な生活が本当に幸福で、不便な生活が本当に不幸なのか、まだ結論は出ていないからだ。>

<人類は、便利すぎる生活にすでに適応できなくなりかけて、悲鳴をあげているのではなかろうか。>

<便利さという点ではもっとも早くから進歩したアメリカでは、麻薬の使用者が激増している。 ハイティーンの麻薬使用者とアルコール過剰摂取者の数は、1960年以後の四分の一世紀間に何と150倍に増えたという。>

<日常生活が便利であってほしいと願っている私個人の希望とは矛盾するが、人類は本来こういう便利な生活、エネルギー的な借金生活に耐えられない生物ではないかという気がしてならないのも事実なのだ。>

 ― 『大江戸 えねるぎー事情』 「生きる」 より ―



便利さという、私たちのからだに沁みこんだ 「魔物」 がモンダイなのだろう。
企業は、次から次へと 「便利」 で 「快適な」 生活を押しつける。
新商品のラッシュは、止められない勢いだ。

私とて、その恩恵にあずかっている。

ペットボトルや空き缶のリサイクルを言うまえに、消費を減らさないとどうにもならないだろうに、それはできそうもない。
燃費のいいクルマを作ったり、バイオ燃料を普及させる前に、クルマの総量を減らさなければ、どうにもならない。

考えると、絶望的な気分におちいってしまう。

わずか百数十年前までの日本は、そうではなかった。
エネルギー効率がよく、資源をうまく使っていたのだ。

これからの世代に期待するしかないのか。
それも難しそうだな。
コンビニで、いつでも何でも手に入るのがあたりまえと思っている世代が、このままじゃオシマイだということに、いつ気がつくか・・・。

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