【読】大江戸 えねるぎー事情
「大江戸」 シリーズをもう一冊、読みはじめた。
これが、きのう読みおえた 『大江戸 ボランティア事情』 に輪をかけて、おもしろいのだ。
『大江戸 えねるぎー事情』
石川英輔 著 講談社文庫 1993.7.15
なぜ 「えねるぎー」 とひらがななのか、わからないが。
石川英輔さん単独の著書。
(巻末に、田中優子さんとの対談あり)
田中優子さんも、この石川さんも、ともに大学の先生。
石川センセイは、私の住まいの近くにある武蔵野美術大学の講師。
いっぽうの田中センセイは、法政大学教授。
田中優子さんが、どちらかというと熱血的な感じがするのに対し、石川さんは冷静な学者タイプで、理論的という印象を受ける。
本書は、かつて世界一の規模を誇った江戸という都市が、いかに省エネ型だったかを、次のような項目ごとに詳しく説明している。
―― あかり、水、米、魚、野菜、着物、住まい、涼む、暖まる、湯、紙、本、薬、医者、酒、塩、鉄、花、遊山、流す、捨てる、生きる
江戸時代と現代を比較するのに、エネルギー消費をカロリー換算しているところが、じつに興味ぶかい。
例えば、米を生産するのに要するエネルギーの計算。
江戸時代は、人力と牛馬だけで米を作っていた。
一町歩(1ヘクタール)あたりの田からの収穫量を四十俵(2.4トン)として、これに要した投入エネルギーは、ほとんど人力だけで、三人の人が半年間、毎日かかりっきりだったとする。
一人一日の労働エネルギーを1000キロカロリーとすれば、年間54万キロカロリー(1000×180日×3人)。
米の食品としての熱量が、1キログラムあたり約3400キロカロリー。
2.4トンでは、820万キロカロリー。
ここから、1キロカロリーの人力で、ほぼ15キロカロリー相当の米が収穫できたという。
(投入エネルギーの15倍の収穫)
いっぽう、現代。
科学技術庁の昭和55年(1890)の資料では、米1キログラムを作るために、2266キロカロリーのエネルギーが必要だという。
つまり、3400キロカロリーぶんの米を生産するのに、2266キロカロリー(これには、農機具の償却値や光熱・動力に要する1072キロカロリーが含まれる)を消費している計算だ。
現代の米作りでは、投入エネルギーの1.5倍の収穫(生産)量しかない、ということだ。
生産効率が、江戸時代の十分の一。
計算がきらいな人には、おもしろくも何ともない話かもしれないが、私にはとてもおもしろい。
江戸時代が、いかに省エネルギーの生活だったか、こんな調子で、綿密に比較されていて、いちいち納得できる。
読みはじめたばかりだが、しばらく楽しめそうだ。
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