【読】五木寛之 『人間の関係』
すこし前に買ってあった本を、ようやく読む気になった。
ちいさな本なので、一日で読むことができた。五木寛之 『人間の関係』
ポプラ社 2007.11.10 1100円(税別)
このところ鬱々とした気分が続いていた私にとって、すこしだけ元気のでる本だった。
<人間の関係、ということを考えながら、体の奥からわきあがってくるのは、人間と人間との一瞬のふれあいの不思議さということです。 (中略) この入学式での話のなかで、ぼくが言いたかったのは、たった一つのことでした。 人間はいいかげんで、愚かしい存在だが、それでも信じられるところもあるよ、ということです。 / 百パーセント信じられるわけではない。 また百パーセントの人間不信もまちがっています。 / 九十五パーセント信じられなくても、五パーセントぐらいは信じていいのではないか。 ぼくはそう感じています。 その五パーセントの有無が、きっと大事なところだと思うのです。>
― 『人間の関係』 「本音は軽々しく表にだすな」 五パーセントを信じて生きる ―
もうひとつ、私には胸に沁みる記述があった。
<これまで書いてきたのは、いわゆる「うつ状態」「うつを感じる」「うつ的な傾向」があるという感覚についてです。 / これが本当の病気になると「鬱病」ということになります。 鬱病は厄介な病気で、専門の治療を必要とします。 (中略) / しかし、問題は、日ごろなんとなく欝を感じる、欝な気分をおぼえる、といった状態と、本当の鬱病とを区別する必要がある点です。 (中略) / 欝と言われる気分は、人間にとってごくふつうの心のありようです。 自然の天候には、晴れの日もあり、曇りもあり、雨も降る、嵐の日もある。 そういったさまざまな変化は、必ずしも病気ではありません。>
― 「憂と愁は人生の贈りもの」 「憂える」ということの大切さ ―
五木さんらしい考え方だと思う。
そういえば、五木さんの奥様(玲子さん)は、若い頃、精神科のお医者さんをしていらした。
金沢時代の、玲子さんとの暮らしぶりや、亡くなった弟さん(邦之さん)のことも、この本に書かれている。
表紙につかわれているのは、舟越桂さんの作品。
(「雪の上の影」 2002年 所蔵:札幌芸術の森美術館 写真提供:西村画廊)
札幌芸術の森 http://www.artpark.or.jp/
舟越 桂 オフィシャルサイト http://www.show-p.com/funakoshi/
いま、書店にいくと、たくさん平積みされている本だ。
売れているらしい。 その理由がわかる気がする。
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コメント
私のブログに来てくださって、コメント、ありがとうございました。
「百パーセントの人間不信もまちがっています。 / 九十五パーセント信じられなくても、五パーセントぐらいは信じていいのではないか。 ぼくはそう感じています。 その五パーセントの有無が、きっと大事なところだと思うのです。」
というのも、とても五木さんらしい考え方ですね。本当に励まされます。そして、なぜ「ほめ屋」活動を始めようと思ったのか、その原点も思い起こさせてくれます。
投稿: ほめ屋 | 2008年2月 3日 (日) 12時03分
>ほめ屋さん
コメント、ありがとうございます。
プラス思考という言葉は(安直に使われすぎているので)私は好きではありませんが、五木さんの言葉は、絶望からの出発という感じがして、勇気づけられることがあります。
投稿: やまおじさん | 2008年2月 3日 (日) 12時57分