【読】これはいい本だ
横山孝雄 『少数民族の旅へ』 新潮社 1984.8.25
文字通り、世界の少数民族を訪ねる旅。
といっても、まなじり決して少数民族を擁護するような態度ではなく、自然体であるところがいい。
文章が自然で、じつに上手い。
文は人なり、と言うが、こういう文章を書く人は信用できる、と、私は思う。
知里むつみさんと結婚したいきさつも、書かれている。
(「ヌプルペツ アイヌ女性との結婚私記」 本書 P.124)
知里むつみさんは、知里幸恵・真志保姉弟にはさまれた、知里高央(ちり・たかなか)さんの娘さん。
つまり、知里幸恵さんの姪御さんにあたる。
こういういい本が、すでに絶版で、新刊では手に入らなくなっている。
(ネット検索したら中古ではたくさん出ていたので、注文したが)
日本の出版界は、ちょっとおかしい。
― 『少数民族の旅へ』 「アンデス」 P.25- から ―
峠を越えた列車が、ゆっくりとアンデス高原へ降り始めると、乗客も生気を取り戻してくる。 その頃になると相席の幼女も私の髭面に馴れたようなので、小さなプレゼントを渡した。 五円玉と五十円玉に紅白の紐を通して小鈴を付けたものだ。 女の子は目を丸くしてしばし鈴の鳴る手もとをじっと見つめたが、気おくれしてか手を出せないでいる。 かわりにお爺さんが受け取ってくれた。 お爺さんとお婆さんが得意そうにその事を周囲に告げると、どっとみんなが集まってきた。 長旅に退屈しきっていた人たちだったが、それまでは私にはまるで関心のないような素振りだった。 本当は、好奇心をインディオ独特の無表情さの下に隠していたようである。
(中略)
人の善いインディオたちに会って、すっかり嬉しくなった。 それまで私が接していたのは外人に対して悪ズレのしたタクシー運転手とか土産売りばかりだったから、土地の人を見るとつい身構えていたことを、この人たちが反省させてくれた。 (後略)
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