【読】【歩】ソメイヨシノ
今日はデジタルカメラを持っていかなかったので、バスの窓から携帯電話のカメラで。このあたりの桜並木は、もちろんソメイヨシノ。
五日市街道・玉川上水沿いの遊歩道には、古くからのヤマザクラの並木が続く。
昼休み、勤務先のすぐ近くにある BOOK OFF で、こんな新書をみつけた。
帰りの電車の中で、少しだけ読んでみたが、興味ぶかい内容だ。佐藤俊樹 著
『桜が創った「日本」 ― ソメイヨシノ 起源への旅 ―』
岩波新書 936 2005.2.18
よく知られていることだが、ソメイヨシノ(染井吉野)は江戸末期に、交配によってつくられた品種である。
さらに、これはなんとなく聞いたことがあったが、「ソメイヨシノはすべてクローン」 なのである。
<ソメイヨシノには種子から育った樹がない。 すべて接木(つぎき)や挿木による。 すでにあるソメイヨシノの木の一部を切り取って、新たな樹に育てたものだ。> (本書 P.14)
考えてみると、これはすごいことだと思う。
ソメイヨシノと呼ばれるためには、種から育てられてはいけない。 なぜか。
<桜には自家不和合性といって、同じ樹のおしべとめしべの間では受粉できない性質がある。 できた種には必ず別の樹の遺伝子がまざる。 だから種から育てると(これを「実生(みしょう)」という)、元の樹とは同じものにはならない。 それに対して、接木や挿木でふやせば、元の樹の形質をそのまま引き継ぐ。 複製ができるわけだ。 これを「クローン(栄養繁殖)」という。> (本書 P.14)
とてもためになる本なのだ。
現代のわれわれのような花見の歴史が、浅いものだということも知った。
というのも、ソメイヨシノは、ほぼ同時期、いっせいに花開き(これは、クローンだから当然といえる)、咲き終わるまでの期間も短いため、花見の時期が限られる。
満開の桜に、わっと人が群がって、陣取り合戦が始まったりするのは、ソメイヨシノだからといえる。
昔からある桜の自生種が、この本では次のように整理されている。
ヤマザクラ群
ヤマザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラ、カスミザクラ
エドヒガン群
エドヒガン
マメザクラ群
マメザクラ、タカネザクラ
カンヒザクラ群
カンヒザクラ
これらの品種は、花期が短くても、すべての樹がいっせいに花開くわけではないので、総体としての花期は長い。
「都市全体でみれば、花の波は激しく一気に通り過ぎるのではなく、もっとゆっくり始まり、ゆっくり終わっていた」(本書 P.25) というわけだ。
そういう自生種がたくさん見られる場所があるという。京都の平野神社など、「多品種型」を残す神社や寺。
東京では小石川植物園、新宿御苑、多摩森林科学園(左のパンフレット=今日、駅でたまたまみつけた)など、研究や産業振興のために多くの種類集めている施設だ。
多摩森林科学園
http://www.ffpri-tmk.affrc.go.jp/
江戸末期といえば、今からせいぜい百五十年ほど前でしかない。
それまでの長い歴史の中では、桜の楽しみ方も今とはずいぶんちがっていたようだ。
こんなことを知ったうえで、今盛りの桜をみると、これまでとはちがった味わいがあるかもしれない。
土曜日には、朝早く自転車で家をでて、玉川上水の遊歩道をゆっくり走って小金井公園に行ってみようと思う。
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コメント
こちらもそろそろ咲き始めましたよ。
そちらは今週末は夜桜見物でにぎわうことでしょう。
花見の宴というのは、苦手ですが、
深夜に桜を見ると、ぞくっときますね。
投稿: モネ | 2008年3月28日 (金) 21時03分
>モネさん
コメント、ありがとうございます。
ダブって入っていましたので、一件は削除しておきますね。
このところ、このブログ(ココログ)の調子がよくありません。
今日は、夜桜をデジカメで撮ってみました。
集団の花見は、私も苦手です。
静かに眺めたいものですね。
ソメイヨシノは、昼間でも、幻想的というか、ちょっと日常からかけ離れたものだと、つくづく感じます。
投稿: やまおじさん | 2008年3月28日 (金) 22時46分