【読】桜を恋う人
タイトルにもひかれて、読み始めている本。
渡辺一枝 『桜を恋う人 ―二つの祖国に生きて―』
集英社文庫 1995.9.25 (単行本 1990.10)
よく知られていることだが、渡辺一枝さんは、椎名誠氏の夫人である。
椎名氏との出会いは、『新橋烏森口青春篇』(椎名誠著)に描かれていた。
この小説はNHKのテレビドラマにもなった。
心やさしく、芯の強い女性、という印象をずっと持っていた。
この 『桜を恋う人』 を読んで、いい文章を書く人だなと、あらためて感心した。
無駄のない、硬質な文章といえばいいのか。
湿っぽくなく、乾いているのだが、その乾きぐあいはまるで草原のようだ。
モンゴルには行ったこともないけれど、草原の風は、この人の文章のようにすがすがしいのだろう、などと考えた。
このノンフィクションの主人公である、岩間典夫さんは、じつに数奇な運命をたどった人。
1943年に14歳で満蒙開拓少年義勇軍に志願し、中国(旧満州)に渡り、終戦間際に召集され、敗戦後はソ連軍の捕虜としてシベリアに送られた。
だが、18歳未満だとわかって釈放され、その後、帰国しようとして果せず、中国人民解放軍の兵士に救われて、解放軍の兵士になる。
それもつかの間、交易馬車の護送中にオロチョン族に襲撃されて捕らわれる。
――私が読んでいるのはここまで。
まだ、100ページほどしか読んでいないが、巻末(文庫版あとがき)に、いいエピソードが書かれている。
著者の渡辺一枝さんは、ある年、中国黒龍江省に住む岩間さんを訪ねるのに、富士桜の若木を二本持って行ったという。
山梨県の石和町で生まれ育った岩間さんの、故郷に多いのが富士桜だ。
別名、マメザクラ。
関東周辺の亜寒帯から暖温帯に分布、富士山周辺でよく見られることから富士桜と呼ばれる。
<この本を書き上げてから後のある年、私は岩間さんを訪ねるのに、富士桜の若木を二本持って行った。 センチメンタルなことと笑われるかもしれないが、この桜にこと寄せて、岩間さんの夢が実って欲しいと、私も願ったからだ。>
<桜は、残念なことに二本とも枯れた。一本は持って行ったその年に、もう一本は二度目の冬を越したかに見えたのだったが、育たなかった。 だがその後、他の人が運んだ桜が、どうやら根づきそうだ。 それにしても極寒の地だ。 もしかするとその桜も、育つには難しいかもしれない。 けれども私は思うのだが、岩間さんの夢は、いつの日にか必ず叶う日がくるだろうと。 私は、岩間さんの願いを私の願いとして受け継ぎ、そしてまた次代に引き継ぎたい。> (『桜を恋う人』 文庫版あとがき)
主人公 岩間さんの 「願い」 とは ―― 今、私が読んでいるこの先に書かれているのだろう。
オロチョン族 (出典:Wikipedia)
オロチョン族(Orochon,Oroqin、漢字表記・鄂倫春)は、アルタイ諸語系の言葉を話すツングース系の民族。主に北東アジアの興安嶺山脈周辺で中国領内の内モンゴル自治区、その近隣のロシア領内に居住する。人口は約7千人。もともとは狩猟をしながら移動していたが、現在は定住化が進んでいる。
この民族の代表的な生業は、肉・内臓・血の食用・飲用や皮革採取目的での獣の狩猟である。狩猟の対象の獣は、マールー(馬鹿(ばろく)、ワピチの亜種マンシュウアカシカ)、ノロ、ハンダハン(駝鹿(だろく)・ラクダジカ、ヘラジカの亜種マンシュウエルクジカ)などのシカ類やリス、テン、オオカミ、イノシシ、オオヤマネコ、クマなどが挙げられる。狩猟時の移動と荷物運搬の手段は、伝統的には主に馬である。
(中略)
射撃に優れることから、満州国軍の特殊部隊として組織された逸話がある。
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