【読】「作家の誕生」(猪瀬直樹 著)
いわゆる郊外型大型古書店、「ブックセンターいとう」 という店が、このあたりにたくさんある。
「BOOK OFF」 ほど全国展開されていないが、おもしろい店だ。
新古書店でありながら、古い本も多い。
これまで、珍しい本を何冊もここでみつけた。
ブックセンターいとう
http://www.book-center.co.jp/index.html
相模原(神奈川県)へ用があってよく行く。
きのうも相模原市 「星ヶ丘店」 で何冊か購入。
そのなかの一冊。猪瀬直樹 著 『作家の誕生』
朝日新書 2007.6.30 720円(税別)
出版されてから、まだそれほどたっていない。
300円でこういう本が手にはいるところが、大型古書店のいいところだ。
いま読みかけの本があるので、じっくり読むことはできないが、はじめの方をすこしだけ斜め読みしてみた。 これがじつに面白い。
この本の帯(腰巻)の写真が笑える。
文豪などといったって、彼らもまたわれわれと大差ない俗人である。
まえがき(はじめに)に、明治36年、日光華厳の滝に投身自殺し、「人生不可解」 という有名なことばを残した藤村操のエピソードが書かれている。
この青年は、「一高」 で夏目金之助(漱石)の教え子のひとりだった。
<漱石はある生徒に訳読をふった。 するとその生徒は「やって来ませんでした」と昂然とした態度だった。 「なぜやって来ない」と訊くと、「やりたくなかったからやって来ませんでした」と答えるので、むっとしたが次回までに予習しておくように、と注意するに留めた。 つぎの時間、再びあてるとまた「やって来ませんでした」と言うので「勉強したくなければ、教室に来るな」と叱った。/漱石を怒らせたこの生徒が藤村操である。>
こういうエピソードが、私は好きだ。
猪瀬直樹は、藤村操のことを 「自分探し」 の第一号と呼んでいる。
<明治時代は、国家をつくる時代である。 幕末から明治維新にかけ動乱を仕掛けた吉田松陰、西郷隆盛、坂本龍馬、高杉晋作らを第一世代だとすれば、伊藤博文、山県有朋ら第二世代はすでに明治憲法までつくりあげた。 そして第三世代の官僚たちがヨーロッパから帰国し(鷗外や漱石など文学者を含めて)、明治国家は急速に成熟の域に入った。/さてこれからどうするか。 自分はなにをすればいいのか。 新しい世代の役割、当面の目標が見えないのでひとりが「不可解」と叫ぶと、そうだ、そうだ、と反響を呼び起こしたのである。(後略)>
まだぜんぶ読んでいないので、大風呂敷をひろげられないが、明治、大正、昭和の文豪、文士たちの生々しい姿が猪瀬直樹らしい鋭い切り口でえがかれているこの本、おもしろそうだ。
― カバー より ―
売れなければ作家ではないのか。
売れたら作家なのか。
太宰治は芥川龍之介の写真をカッコイイと思った。
文章だけでなく見た目も真似た。
投稿少年だった川端康成、大宅壮一。
文豪夏目漱石の機転、菊池寛の才覚。
自己演出の極限を目指した三島由紀夫、
その壮絶な死の真実とは……。
― 帯 (あとがきより) ―
作家という職業は なぜ生まれたのか。
最初の自分探しは 学歴エリートよりはじまるが、
時間つぶしの余裕をもつ若者は 時代とともに増えていき、
今日のフリーターの 原型のようなかたちで
「文学青年」と呼ばれた一群が 簇生する。
しかし、彼らは 生き抜かなければならない。
生活をしなければならない。
その悪戦苦闘が 僕には鮮明に見える。
猪瀬直樹の数ある著作のうち、私がこれまで読んでとくにおもしろかったもの。猪瀬直樹
『ピカレスク 太宰治伝』 小学館
他にも、三島由紀夫の評伝 『ペルソナ』、川端康成と大宅壮一を描いた『マガジン青春譜』 があるが、私は読んでいない。
『日本人はなぜ戦争をしたか
昭和16年夏の敗戦』 小学館
昭和16年夏、日米戦のシミュレーションをしていたという事実に驚く。
そのシミュレーションでは、日本はアメリカにとうてい勝てないという結論がでていた。
にもかかわらず、12月8日、日米開戦に踏みきったのはなぜか。
ずっと前に文庫で読んでいたが手放してしまい、この著作集をまた買ってしまった。
『ミカドの肖像』 (小学館)もユニークな本だったが、やはり手放してしまって手元にない。
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