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2008年5月11日 (日)

【読】海と宝のノマド

きのう、駅ビルの本屋をのぞいてみたら、店頭にこんな本があった。

Segawa_ainu_rekishi瀬川拓郎 著 『アイヌの歴史 海と宝のノマド』
 講談社選書メチエ 401  1600円(税別)
 2007.11.10 第一刷/2008.3.5 第四刷

出版されてから間もない本だが、気づかずにいると手に入れるのが難しくなるのがこういう本だが、すでに四刷まで版を重ねているのは好評ということか。
出合ったときが買い時。 迷わず購入。

「はじめに」と「あとがき」を読んでみた。
私にはとても興味ぶかい内容。
偶然みつけて手に入れることができて、よかった。

著者は、1958年生まれ、岡山大学史学科考古学専攻卒業。
現在、旭川市博物館の学芸員(本書の著者略歴)。

「はじめに」 に、著者の考え方が示されている。
アイヌの歴史・文化に関心を持ちつづけてきた私が、ずっとひっかかりを感じていたことが、これを読んで少しすっきりした。

ややもすれば硬直化しがちな 「アイヌ民族観」 が私にもあったようだ。
狩猟採集民、縄文人の末裔、自然との共生、……等々。
だが、アイヌの人々は、縄文文化であゆみを止めてしまったわけではない。
さまざまな 「宝」 (日本の刀や漆器、中国製の錦、ワシ・タカ羽、クロテンの毛皮、など) を得るために、幅広く交易をしていくなかで、その社会の内部に大きな格差が生まれていた。
「宝」を持つ者は名誉と威信を持ち、それが「首長」の条件ともなっていた。
また、アイヌ社会内部でサケ漁業権をめぐる対立・抗争があったこともよく知られている。

著者が言う 「リアルなアイヌの歴史」 をもっと知りたいと私は思う。

「はじめに――海と宝のノマド」
  考古学からみたリアルなアイヌの歴史 (P.4) より

<アイヌという人びとについて、私たちはどんなイメージをもっているだろうか。/なんとなく縄文人のイメージを重ねている読者が多いかもしれない。 (中略)/私の手もとに、北海道が作成した 『アイヌ民族を理解するために』 というアイヌの歴史や文化、現状を紹介した小冊子がある。 そのなかに繰り返し登場する言葉があることに気がつく。/いわく、「自然」の恵み・自由な「大自然」・「自然」の材料だけで・「平和」な暮らし・「平和」な生活・「秩序」ある暮らし・「秩序」正しい社会――。>

<かつての伝統的なアイヌ社会のイメージは、自然と共生するエコロジカルな社会、対立も格差もない穏やかで秩序正しい社会、といったもののようだ。 ジャン=ジャック・ルソーが説く自然人のような、この「公的」なアイヌのイメージは、さまざまなアイヌ文化の解説書の底流をなしているといえるかもしれない。/だが、アイヌ社会はほんとうに「自然との共生」「平等」「平和」の社会だったのだろうか。/かならずしもそうではなかった、と私にはおもわれる。>

巻末 「おわりに――進化する社会」 のなかで、二冊の本が紹介されている。

砂沢クラ 『ク スクップ オルシペ――私の一代の話』
<砂沢クラさんは、私が暮らしている旭川で生まれ育ち、明治から平成を生きたアイヌ女性だ。 上川に和人が集団入植して数年後に首長の娘として生まれ、伝統的な文化を継承しながら、貧窮と迫害のなかを生きてきた。 その彼女の自伝である……>

杉村京子 『半生を語る――近文メノコ物語』
<同じ上川アイヌの女性・杉村京子さんの自伝……も、強く心に残る>

読んでみたくなった。
砂沢クラさんの本(福武文庫)と杉村京子さんの別の本が、ネット販売の中古書でみつかったので、注文した。

「ノマド nomad」 とは、遊牧民、放浪者という意味のことばである。
(そういえば、元ちとせに、『ノマド・ソウル』 という、いいアルバムがあった)



【参考サイト】

(著者インタビュー) ※とても参考になる
北海道新聞旭川支社  ヒューマン いんたびゅー
http://asahikawa.hokkaido-np.co.jp/human/20080406.html

(書評)
中日新聞・東京新聞 書評『 アイヌの歴史』 瀬川 拓郎 リアルな社会像大胆に提起
http://www.tokyo-np.co.jp/book/shohyo/shohyo2007121604.html

(書評)
今週の本棚・新刊:『アイヌの歴史--海と宝のノマド』=瀬川拓郎・著
  - 毎日jp(毎日新聞)http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2007/11/20071118ddm015070011000c.html

(著者のセミナー録)
アイヌ文化振興・研究推進機構
http://www.frpac.or.jp/
 平成17年度普及啓発セミナー報告集
  http://www.frpac.or.jp/rst/sem/sem17.html
  (11) 瀬川拓郎氏 アイヌ・エコシステムと縄文エコシステム
   ―自然利用からみたアイヌ社会のなりたち― (PDF)

旭川市博物館
http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/museum/index.html

(Wikipedia) アイヌ文化
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%8C%E3%81%AE%E6%96%87%E5%8C%96%E3%81%A8%E7%94%9F%E6%B4%BB

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