【読】終末論ではなく・・・
石川英輔 著 『大江戸リサイクル事情』 を読んで、考えさせられた。石川英輔 『大江戸リサイクル事情』 講談社文庫
巻末に、五代利矢子さん(評論家)と石川英輔さんの対談が掲載されている。
石川さんの考え方は徹底している。
「江戸時代に戻れる、戻れないという議論をよくされるんですが、私は、戻らなくてすむうちは戻る必要なないと思います。 今の生活の方がはるかに楽ですからね。 ただし、こういう工業社会をいつまでも維持するのはとうてい無理で、早晩行き詰まるだろうと思いますが」
「私は、環境をもっと広い意味に考えて、水や空気のような外部の環境がだめになる前に、たぶん人間の内部環境がだめになることでこの工業社会が維持できなくなる時が来るのではないかと思っています」 (本書 360ページ)
※ 「人間の内部環境がだめになる」 とは、膨大なエネルギーを使う生活に人間の肉体が耐えられなくなるだろう、という石川さんの持論。
「人類は、ホモ・サピエンスになってからでも何万年という時間が経っているんでしょう。 その中で、いつも体を激しく使って、食べ物がたっぷりあることはめったにない環境に適応して生き残っているのがわれわれなんです。 それが急に三十年ぐらいの間に、歩くのはやめた、重いものは持たない、汚れ仕事はしないとなると、膨大なエネルギーを使って成り立っている今の生活に適応しきれないんですね」 (352ページ)
この石川さんの発言に対して、五代さんが 「一種の終末論ですか」 と問うと、石川さんはこう答える。
「いいえ。 終末論ではなくて、何も怖がることはありません。 今のわれわれは、これが唯一の生活だと思って暮らしていますが、別にもっとのどかに暮らす方法はいくらでもあると思います。/GNPが今の半分だったのは1972年頃ですが、私たちはけっしてみじめな暮らしをしていませんでした。 (中略) もっとつつましい生活に戻っても、別に終末でもなんでもない。 こんなストレスだらけのわずらわしい工業社会を維持しなくてもよくなった時、きっとみんなほっとするんじゃないかと思いますよ」 (361ページ)
明日、月曜日は、この地域の 「もえるごみの日」 である。
私の住む地方自治体では、「フィルム状(うすい)プラスチック」、つまり、菓子袋、包装袋、レジ袋、ラップなどは燃やしてしまう。
私が出すごみの中にも、こういうプラスチック製品がたくさんある。
「もえるごみ」 のゆくえは?
高温焼却炉で燃やすのだろう。
燃やすためには、たくさんのエネルギー(元をただせば石油燃料)が必要だ。
では、「もえないごみ」 のゆくえは?
ほとんどが埋め立て処理、一部は、いわゆる 「リサイクル」 (これにも膨大なエネルギーが必要) によって別の形になるとしても、つまるところ、「一方通行」 (使い捨て) の地球資源の消費である。
今日、近くの図書館から何冊かの児童図書を借りてきた。
その中の一冊、『もしも石油がなくなったら ―教科書にでてくる産業と経済 ⑨―』 (ポプラ社/1990年) に、おそろしいことが書いてあって、愕然とした。
<毎日、わたしたちが使っている電気やガスのもとであるエネルギー資源は、無限にあるわけではありません。 石油や石炭にはかぎりがあるのです。 いつかは、これらの資源を、使いつくしてしまう日がくるのです。/現在わかっている埋蔵量(たとえば石油の場合、あとどれくらいの量が、地下にあるのかということ)から、それぞれの資源があと何年くらいもつかを計算すると、石油が35年、天然ガスが60年、石炭が190年だという人もいます。>
この35年という数字は、現代の私たちに突きつけられた、大きな宿題であろう。
ふだんは、消費生活にすっかり麻痺してしまって考えることもないのだが(少なくとも私はそうだった)、ちょっと正気に戻って考えてみれば、小学生にも想像がつくことだ。
さあ、どうする?
※ 2008.5.5追記
上に掲げた本(児童図書)にある、「石油が35年」 というのは、1990年時点での数字。
出版年から18年も経過しているので、残り17年ということになる。
この 「35年説」 の裏づけは何も書いていないから、ほんとうはどうなのか、調べてみたいとも思う。
地球の石油資源の残りの量など、誰にもわからないことのなかもしれないが……少なくとも、「有限」 ではあるはずだから。
| 固定リンク
「【読】読書日誌」カテゴリの記事
- 【読】2023年5月に読んだ本(読書メーター)(2023.06.01)
- 【読】池澤夏樹=個人編集 世界文学全集(2023.05.12)
- 【読】桐野夏生の新作(2023.05.07)
- 【楽】【読】五木寛之の夜 ふたたび(2023.05.04)
- 【読】池澤夏樹『また会う日まで』読了(2023.05.01)
「こんな本を読んだ」カテゴリの記事
- 【読】2023年5月に読んだ本(読書メーター)(2023.06.01)
- 【読】桐野夏生の新作(2023.05.07)
- 【読】池澤夏樹『また会う日まで』読了(2023.05.01)
- 【読】2023年4月に読んだ本(読書メーター)(2023.05.01)
- 【読】沢木耕太郎『天路の旅人』を読む(2023.04.15)
「石川英輔」カテゴリの記事
- 【読】江戸時代のエコロジー(2009.09.02)
- 【読】終末論ではなく・・・(2008.05.04)
- 【読】リサイクルってなんだ?(2008.04.25)
- 【読】大江戸テクノロジー事情(2008.04.22)
- 【読】日本庶民生活史料集成(2008.03.09)
コメント