【読】星野道夫さんをめぐって
こんな本が私の本棚にあった。
何年前に買ったのかも忘れてしまったが、機が熟したとでもいうのだろうか、読んでみることにした。
『星野道夫 永遠のまなざし』
小坂洋右(こさか・ようすけ)
大山卓悠(おおやま・たかひろ) 著
山と渓谷社 2006.9.30
カバーの写真は、1996年8月4日、クリル湖畔でくつろぐ星野道夫さん。
カムチャッカ半島南端の、すばらしい風景だ。
しかし、これが彼の最後の写真になった。
四日後の8月8日未明、一頭のヒグマが星野さんのテントを襲い、星野さんをくわえて去ってしまった。
悲惨な事故だった。
享年43歳。
この本は、星野さんがなぜヒグマに襲われたのか、その真相を追い求めた話だが、それだけにととまらず、星野さんの生き方と晩年にやろうとしていたことを、友人の立場からていねいにたどっている。
私は、星野さんがクマに襲われたニュースをほとんど憶えていない。
そもそも星野道夫という人を当時は知らなかったから、関心もうすかったのだろう。
そういえば、ひとりの日本人「動物写真家」が、カムチャッカ半島でクマに襲われて死亡したニュースが流れていたような気もする、という程度だ。
この本を読みはじめて知ったことだが、当時、流されたニュースは誤解を招くものだったようだ。
「獰猛な一頭の人食い熊に襲われた」 というニュアンスで、クマはやっぱり怖いものだという誤った風聞がひろまったらしい。
星野さんを襲ったヒグマは、ロシアのある人物がエサを与え続けて 「餌付け」 したことにはじまって、人間の食糧を襲うようになり、しばしば撮影現場の近くに出没していたという。
(星野さんは、日本のテレビ局の撮影に同行していた)
「餌付け」 という日本語は誤解を招くかもしれないが、英語では Food Conditions といい、人間の食べ物の味を覚えて人間を恐れなくなったクマを指すという。
つまり、人馴れして、人間のそばに行けば食べ物があることを知っており、それが意外と簡単に手に入ることを学習してしまったクマである。
けっして、「獰猛で人間を食うクマ」 ではなく、本来の野生が人の手によって狂わされた特殊な個体なのだ。
続きは、また後日。
ちなみに、この本の著者のひとり、小坂洋右さんという人は、すこし前に私が手にいれた本の著者と同一人物であることを知った。
不思議な符合である。
小坂 洋右 著 写真/林 直光
『アイヌを生きる 文化を継ぐ 母キナフチと娘京子の物語』
大村書店 1994.4.20
小坂洋右
1961年札幌市生まれ。旭川市で育つ。北海道大学卒。
アイヌ民族博物館勤務などを経て、1989年から北海道新聞記者。
(『星野道夫 永遠のまなざし』 山と渓谷社の著者略歴より、抜粋)
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