【読】魔法のことば(星野道夫) 続
「switch」 19994年7月号 (Vol.12, No.3) を手に入れることができた。
モノトーンの星野さんの写真が表紙に使われていて、なかなかいい。
先日読んだ
『終わりのない旅 星野道夫インタヴュー』
(スイッチ・パブリッシング)
の元のインタビュー記事が掲載されている。
LONG INTERVIEW
「原野に生命の川が流れる」 (P.49-62)
文 湯川豊 / 写真 垂見健吾
今読んでいる講演集 『魔法のことば』 (スイッチ・パブリッシング) にも、ちょうどこの時期(1994年)の講演が載っている。
南東アラスカに、星野さんの関心が移っていった時期だ。
星野さんの「魔法のことば」を、ここでまた引用したい。
(1994年4月9日、第4回国際イルカクジラ会議江ノ島フォーラムにて行われた講演。講演タイトルは「南東アラスカとザトウクジラ」)
エスキモーの考え方、精神世界というものはだんだん消えつつありますけど、一つはイヌアという考えが精神世界の中で非常に大きな意味を占めています。 イヌアというのは、あらゆる生物や、山とか川とか流氷などの無生物も含めて、すべてのものに人間が住んでいる。 つまり万物が人間のように生きているという考え方があります。 (中略) もう一つはシラという考え方で、災害や病気など人間の手に負えない超自然の世界を支配している神の存在をさします。 このイヌアとシラと霊魂が昔から彼らの精神世界を支えている。 (後略) ― P.199 ―
生物は気が遠くなるくらいの時間を経てここにあるわけですが、毎年そこに戻ってくるザトウクジラと氷河と原生林、この三つをテーマにそのことをとても分りやすく表現できるんじゃないか、そう思ったわけです。 (中略) そういう長い時間ということを考えたときに、では人間の持っている時間とはどういうものなんだろうか、(後略) ― P.202 ―
この後、星野さんは面白いことを言っている。
私はちょっと意表をつかれたが、なるほどなと思う。
引用だと長すぎるので、一部を要約して引用する。
歴史というものは、それほど遠いときに起ったものではない。 ずっと続いているということだ。
人間の歴史を頭の中で考えるとき、人間の一生を基準にしたスケールで考える。
例えば、弥生時代を考えたとき、それが1800年とか2000年前の遠い昔の出来事のように思ってしまいがちだが、人間の一生を辿っていくことで見てみる。
弥生時代がどれくらい前かというと、自分が今ここにいて、その前に親がいて、その前にまた親がいて、そういう人の一生を繋げていくことによって歴史を見ていくと、弥生時代なんていうのは人間が一列に並んだら60人から80人くらいが並んでいるに過ぎないのではないか。
(以下、原文)
つまりその一列に人間が並んでいる場合に、ふと自分と血が繋がっている弥生時代の人間というのは、顔の形さえきっと見えるんじゃないかというふうに思ってしまう。 そういふうに考えると、人間の歴史はとても短いような気がしてしょうがないんですね。 つまり地球のスケールや歴史を考えた場合、一億年というタイムスケールはやはり手が届かない。 例えば恐竜が絶滅した何万年前というのはちょっと僕らの感覚では分らないけれども、一万年前だったら人間の歴史を遡ることで本当についこの間のことのように感じられる気がするんです。 ― P.203 ―
『森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて』
星野道夫 1996.12.10 世界文化社
月刊「家庭画報」 (世界文化社刊)に、1995年8月号から1996年9月号まで連載されたが、星野さんの急逝(1996年8月8日)によって、未完のままとなった。
星野さん晩年(結果的には、だが)の大きな仕事のとっかかりだった。
Life is what happen to you while you are making other plans.
(人生とは、何かを計画している時起きてしまう別の出来事のこと)
― 星野さんの友人だった シリア・ハンターのことば ―
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