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2008年6月21日 (土)

【読】星野道夫さんとクマ(続)

Hoshino_coyote_no2「coyote」 №2 2004.10.8
  特集 星野道夫の冒険
 株式会社 スイッチ・パブリッシング

この中に、「星野さんへの質問箱」 というページがある。
星野さんは、このように質問に答えている。

 クマに出合ったらどうすればいいんですか?
 そうですね。 それこそがアラスカにおける永遠のテーマの一つだんだけれども、誰も正しい答えは持っていないんですよ。 でも僕が思うのは、みんな、二つの間違いを犯すケースが多いんです。 一つは怖がりすぎるということ。 クマと出合った時に、やっぱりクマも怖いわけだからとっさに判断するわけですよね。 怖いから襲うか、怖いから逃げるかって。 そういう時にこちらが落ち着いていると、クマにもそういう気持ちが伝わると思うんです。 (後略)

この雑誌はとてもすばらしいのだが、引っ張り出してきたのにはわけがある。
今日、近くの図書館から、星野さんへのインタビューの本を借りて、読んでいるのだ。
ぐいぐい引き付けられる内容で、今日中には読み終えるだろう。

Hoshino_yukawa_interview『終わりのない旅 星野道夫インタヴュー』
  ― 原野に生命の川が流れる ―
 湯川豊 スイッチ・パブリッシング 2006.8.22

このインタビューは、1994年2月、星野さんが帰国していた折に二回にわたって行なわれたもので、「Switch」 同年7月号に掲載され、星野さんの死後、『表現者』 という本に収録されたものだ。
「Switch」 は持っていないが、そういえばこんな雑誌があったな、と思いだしたのが上の 「coyote」 だ。


Hoshino_hyougensha1Hoshino_hyougensha2『表現者 星野道夫』
 株式会社 スイッチ・パブリッシング
 1998.9.10
何年か前、星野さんのことを知った当時、立て続けに読んだ本のなかの一冊。
図書館から借りて読んだのだが、深く感銘をうけ、その後購入。

湯川豊さんは、文藝春秋社の編集者だった人で、星野さんと親交があったそうだ。
星野さんの 『旅をする木』 (文藝春秋社) は、湯川さんが編集者だったときに、「原稿を書くのにまとまった時間をつくるのがむずかしい、といった彼に、僕(という読者)に宛てた手紙を書くかたちにしたら、と勧め」、「三部に分かれているうちの(I)の部分は、その手紙がそのまま収録されている」 という。
(『終わりのない旅 星野道夫インタヴュー』 はじめに/湯川豊)


ということで、いま読んでいるインタビューは、私には再読のはずだが、胸にしみる会話である。
巻末に、池澤夏樹さんの一文があるが、その中で池澤さんはこう書いている。

<星野道夫が死んでもう十年になると聞かされて、ぼくは驚く。
だってあれはついこの間のことではなかったか。 (中略)
星野道夫はアラスカを自分の領域として選んだ写真家であり、行動的な思索者だった。 死んだ時、彼には写真と文章を通じて伝えるべきメッセージがあった。 その内容は決して単純明快なものではなく、一点の写真、一行の文章によって伝わる部分もあれば、彼のすべてを見てすべてを読んでも掴みきれないものもある。 (後略)>

<彼が遺した写真と文章は福音書によく似ている。 一行だけでも意味が深い一方で、ぜんぶを読んでもまだその全容は理解できないと思わせる。 繰り返しの多い、しかも強烈なエピソードに満ちた、フラクタルな文体。>

 (本書巻末 「星野道夫の十年」 池澤夏樹)


星野さんが遺したたくさんの写真、文章は、汲めども尽きない清冽な泉のようだ。



※ フラクタル fractal
 自己相似図形 小さな部分が全体の図形の縮小である図形
  (三省堂 コンサイス カタカナ語辞典 第2版)
いかにも池澤さんらしい理科系用語だが、星野さんの文体の特徴をよくあらわしていると思う。

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コメント

私も図書館へ行って、星野道夫さんの本を借りてこようと思っていたところでした。
その中から、手元に置いておきたい本を選ぶつもりです。
アラスカのオーロラを撮ったものを真っ先に見てみたいと思っています。

「アイヌ神謡集」他、届きました。
じっくり読んでみます。

投稿: モネ | 2008年6月21日 (土) 21時49分

>モネさん
いつも、コメントありがとうございます。
星野さんの本はたくさん出ていますね。
写真集も素晴らしいのですが、子ども向けの写文集もいいですよ。もちろん、エッセイ類も魅力的です。

星野道夫公式サイト
http://www.michio-hoshino.com/

投稿: やまおじさん | 2008年6月21日 (土) 21時59分

coyoteは定期購読しているぐらい好きな雑誌です。
なのに俺は星野道夫さんについては詳しくありません。
アラスカで亡くなった写真家(?)、ぐらいしか。
『旅をする木』という本を持っているのでその気になったら読んでみます。

投稿: はっせー | 2008年6月21日 (土) 23時39分

>はっせーさん
この出版社(スイッチパブリッシング)は個性的ですね。
星野道夫さんとも深いつながりがあったようです。
「coyote」のバックナンバーを見ても、魅力的な特集ばかり。
吉本隆明さんの特集などもあるんですね。

星野さんは、生き方そのものが魅力的です。
私がはじめて写真集に出会ったのは、まったくの偶然で、山の中にある料理屋さんに置いてあったのを見たのでした。
スケールの大きなアラスカの写真に、軽いショックを受けました。
エッセイ類は、人によって感じ方がちがうかもしれませんが、すばらしい文章を書く人だと思います。
文は人なり、と言いますが、星野さんの思索の深さを感じます。

投稿: やまおじさん | 2008年6月22日 (日) 06時27分

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