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2008年6月25日 (水)

【読】魔法のことば(星野道夫) 続々

Hoshino_mahou『魔法のことば』 星野道夫 講演集
  スイッチ・パブリッシング 2003.4.25

この本については、感じるところがたくさんあったので、何回も書いてしまった。
あと数ページを残すばかりとなった。

繰りかえし語られるエピソードも多いが、それは何度聞いても飽きることのない昔話、物語に似ている。

巻末、池澤夏樹さんが寄せた文章 「星野道夫の講演」 に、池澤さんらしい鋭い考察がある。
引用ばかりで気が引けるが、いくつかポイントを書いておこう。

<星野道夫が優れた話し手であったことは、その講演を文字で読んでいるだけでもわかる。 彼の話はただの情報ではない。 彼自身が二十年以上をかけて得た知恵を語るものであり、その背後にはアラスカの自然と先住民の暮らしという叡智の体系があった。>

<彼自身それを本などから得たのではなく、時として非常な危険に満ちた体験を通じて体得し、また村々の老人たちの話を聞くことによって集めたのだ。>

星野さんは、アラスカの自然にひかれていたことは確かだが、それ以上に、アラスカに住む人々が好きだったのだと思う。
星野さん自身がこう語っている。

「もしアラスカに人が暮らしていなくて、美しい自然だけだとしたら、僕はアラスカにそれほど魅かれなかったでしょう。」 (本書 P.276 1996年5月12日 八ヶ岳自然ふれあいセンターでの講演)

たしかに、星野さんの撮った雄大なアラスカの風景、動物たちの写真はすばらしく、感銘を受けるものばかりだが、私がそれ以上に好きなのは、エスキモーやインディアンと呼ばれる人々(星野さんは彼らをこう呼んでいる)のじつに魅力的な写真の数々だ。
あるいは、人間の気配が感じられる、朽ち果てたトーテムポールや、クジラの骨の墓標を撮った写真がいい。

星野さんの晩年(突然の事故死だったから、晩年ということばがふさわしくないかもしれないが)、アラスカのインディアンやエスキモーに伝わる伝説(ワタリガラスの伝説)のルーツを追って、シベリアへ足を伸ばそうとしたのも、星野さんが人間を好きだったからだと思う。

池澤さんは、上に引用した文章に続けて、星野さんの講演についてこう書いている。

<本当は公民館や講堂ではなく冬の炉端で、あるいは夏の夜に星空を見ながら、聞くべき話かもしれない。 また、できればあなたは子供であった方がよかったかもしれない。 もちろん、それをこの本で読むのではなく、彼の話を直に聞ければそれがいちばんよかった。 でも贅沢は言うまい。 (後略)>

<これは彼が語ったところを本にまとめるという変則的な成り立ちの本である。 読み手の方もこれを読むのにはちょっとした工夫がいるとぼくは考える。 (中略)>

<まず、ゆっくり読むこと。>

<次に、一度にたくさん読んではいけない。 彼は本当に大事なことしか言わなかった。 そして本当に大事なことは何度でも言った。 先住民の語り手は同じ話をいくどとなくする。 大事なことはそうやって聞き手の心の奥深くにしっかりと刷り込むものなのだ。>

星野さんが、あの事故にあわずに仕事を続けていたなら、今の私とほぼ同じ年齢になるはずだ。
(同期といっていい年齢の人だったから)
今頃どんな写真を撮り、どんな話を聞かせてくれただろうか、と思う。
さびしいことだが、しかたのないことである。



以下、全くの蛇足で、星野さんの本の価値をおとしめるものではないのだが、この本(2003年4月25日 第一刷)には、あきらかな誤植がいくつかある。
まちがったまま受け取る人はいないだろうし、その後訂正されているかもしれないが……。

P.70 「第三章 めぐる季節と暮らす人々」 の講演場所
 北海道十勝市清水町 → 北海道上川郡清水町
※私は、市町村合併でこんな市(十勝市)が誕生しようとしていて、それを先取りしてこう記述したのかと思った。 一瞬だが本当にそう思って、調べたりした。

P.266 「第九章 100年後の風景」 の講演場所
P.286 「第十章 インディアンたちの祈り」 の講演場所
 山形県八ヶ岳自然ふれあいセンター → 山梨県八ヶ岳・・・
※これも、一瞬だが、山形県にも八ヶ岳という地名があるのかと思った。 厭味でも皮肉でもない。

八ヶ岳山麓で星野さんが講演していた頃(1996年5月)、私は、まさにその八ヶ岳連峰の南端にある山小屋へ、足繁く通っていた。
その当時、星野さんのことをまったく知らなかったので、今からおもうと残念なことをした。
しかし、これも人生での巡りあい、「縁」というものなのだろう。

星野さんは、八ヶ岳山麓での講演で、八ヶ岳によく通っていた頃のはなしもしている。
彼にとっても思い入れの深い土地だったようだ。



【参考サイト】

(星野さんの写真が見られるサイト)
写真家 星野道夫 | 富士フィルム ウェブ写真美術館&ショップ
 http://fujifilm.jp/promotion/museum/photographer/hoshino/index.html

(星野さんの事故死の謎を追求した本)
山と渓谷社-商品紹介>星野道夫 永遠のまなざし
 http://www.yamakei.co.jp/products/detail.php?id=340200

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コメント

写真集も改めて開いてみました。ほんとうにスケールの大きい映像です。アラスカ、星野さんを偲んで歩いてみたくなりました。

投稿: 玄柊 | 2008年6月26日 (木) 14時53分

たくさん紹介してくださって、ありがとうございます。
何冊か買ってしまいそうです。。

同時代を生きてきた星野さん。もっと語ってほしかったですね。

投稿: モネ | 2008年6月26日 (木) 21時25分

>玄柊さん、モネさん
いつもコメントをありがとうございます。
昨夜から、また別の本を読み始めました。
さきほど、新記事として掲載しましたので、よろしければお読みください。
しばらくは、星野道夫さんのまわりをめぐる読書が続くかもしれません。

投稿: やまおじさん | 2008年6月26日 (木) 22時43分

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