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2008年7月25日 (金)

【読】この本もおもしろい

こんなタイトルばかりだが、本のことしか書くことがないので。
それにしても、暑い。
夜、家のなかにいても汗だくだ。

すこし前に、このブログでちょっとだけ紹介した本。

 2008年5月18日 (日) 【読】「作家の誕生」(猪瀬直樹 著)
 http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_be86.html


今日から読みはじめたこの本は、予想にたがわず面白い。
猪瀬直樹の書いたものも、昔から好きなのだ。

Inose_sakka_tanjou猪瀬直樹 『作家の誕生』
 朝日新書 048  2007.6発行
 244ページ  720円(税別)

古今東西、作家と呼ばれる人たちは、変わり者が多いと思う。
近所に住んでいたら、おつきあいするのがためらわれる、そんな人ばかりだ。
私には、作家をあがめたてまつる趣味はない。
人間くさいエピソードが好きである。
だから、この本が面白い。




<川端康成は五年生の秋、手帖にこう書き込んだ。
「内藤千代子のホネームーンやエンゲージで読んだような男学生と女学生との交際が懐かしいものとして現れる。 自分もあんなに交わってみたいと思う。 草平氏と明子(はるこ)さんの煤煙がまだ読まないながら浮ぶ。 自分もあんな恋をしてみたいような気がする」
 夏目漱石の弟子のひとり、森田草平の『煤煙』は、ある事件の一部始終をありのままに書いた小説だった。 (以下略)>  ― 第2章 スキャンダルとメディア より ―

明子(はるこ)とは誰か。
当時は権威があった会計検査院の課長の娘。
日本でひとつしかない女子大、日本女子大に進んだ
「ギリシャの情熱的な叙情詩人」 サッフォーに似た
「二重瞼の西洋人的な面立ちと地黒の肌」 を持った二十二歳の女性。

次のページの写真を見て驚いた。
「明子(平塚らいてう) (1886~1971)」 のキャプションがある。
たしかに、西洋的な容貌の別嬪である。

そういえば聞いたことのある二人の心中未遂事件。
その顛末をありのままに書いたのが、森田草平の 『煤煙』 という小説だったらしい。
森田草平は、才女といっていい平塚らいてうに、体よく翻弄されたのである。

「故郷に妻子を置いて上京し、別な女をつくったりして、そこそこに蕩児」 であり、「女のあしらい方を心得て」 いたはずの森田草平だったが、明子に 「自分はダブルキャラクターよ」 などと言われ、どういう意味だね、と訊ね、逆に 「なんだと思います?」 と突っ込まれて、狼狽するのである。

ただの情けない、すけべおやじである。

ちなみに、夏目漱石は、心中に失敗して世間の強い風当たりを受けた弟子の草平を、自宅に置いてかばったという。
また、『三四郎』 のヒロイン、美禰子のモデルがこの明子だったという。
有名な話かもしれないが、私は知らなかった。
恥ずかしながら、『三四郎』 もまともに読んでいないし。

ただ、こういう、きわめて人間くさいエピソードが私は好きだ。

それにしても、作家と呼ばれる有名人よりも、市井の無名の人々のほうが、人間としてまっとうな生き方をしているんじゃないか、と私には思えてならない。

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コメント

作家、詩人は生きることへの執着や妄想は大きいのですが、決して褒められた生き方をした人々ではないでしょうね。川端康成も「作家はやくざな商売」と言っていたそうです。

投稿: 玄柊 | 2008年7月28日 (月) 06時30分

川端康成という人も、そうとう変わった人だったようです。
作家とか文豪と呼ばれる人たちのなかで、人間的に好きになれそうな人は少ないです。

投稿: やまおじさん | 2008年7月28日 (月) 20時22分

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