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2008年10月18日 (土)

【読】知里幸恵をめぐる四冊

テレビ番組の影響は、すごいものだと思った。
一昨日の夜(2008/10/15)、NHK総合テレビ 「その時歴史が動いた」 という番組で、知里幸恵が紹介された。
私も、番組のことを教えていただいて、ビデオにも録り、放送もみた。

Asahi_shinbun_20081016ためしに、ネット検索で 「知里幸恵」 を探してみると、この番組に関する記事がたくさんヒットした。
私のこのブログでも、たちまち検索フレーズランキングの第一位(ここ一週間の集計、10/17現在)になっている。

このブログの別の記事のコメントに書いたことだが、私は、この番組をそれほどいいとは思わなかった。

理由はいろいろあるが、ドラマ仕立ての番組のつくり(それがこの番組のコンセプトのようだが)に、違和感をおぼえたのが一番の理由。

番組に登場した知里幸恵役、金田一京助役の俳優の演技が、私の中のイメージと大きくちがうし、いかにも芝居がかっていたのが、とてもひっかかった。

ただし、貴重な映像(知里幸恵の肉筆ノート)もあったし、幸恵さんの縁続きになる横山むつみさん(旧姓:知里むつみさん)も登場して、それはそれで収穫だったのだが。


知里幸恵さんのことを私が知ったのは、それほど古いことではない。
有名な 『アイヌ神謡集』 (現在でも岩波文庫で販売されている) のことは知っていたのだが、読んでみようという気にはならなかった。
私には遠い世界で、縁がなかったのだ。

Ainu_shinyouそれが、ある時期、何かのきっかけでアイヌの人たちのこと(歴史、風俗、文化、生き方)に関心が向いてから、さまざまな本を夢中になって読んだり、調べたりした。

このあたりの事情は、手前味噌になるが、私のウェッブサイトに三年ほど前に書いた。
「晴れときどき曇りのち温泉」 ― 資料蔵(アイヌ資料編)
 http://yamaoji.hp.infoseek.co.jp/k_ainu.html
 http://yamaoji.web.fc2.com/k_ainu.html

ウェッブサイトで、私が感銘をうけた本を何冊か紹介しているが、それをここに載せておこうと思う。
検索でこのブログに来られた方々へ、情報提供したい気持ちからだ。


以下、いずれも、藤本英夫さんという人の著書。

藤本英夫 (ふじもと・ひでお)
1927年 北海道天塩町生。 北海道大学卒。
静内高校、札幌星園高校、北海道教育委員会、北海道埋蔵文化財センターを経て、現在、北海道文化財研究所に勤務。
日本民族学会会員、日本口承文芸学会会員、主著に 「アイヌの墓」(日経新書)、「銀のしずく降る降る」「知里真志保の生涯」(新潮選書)、「北の墓」(学生社)、「アイヌの国から」(草風館)、「じゅうたんの上の馬」(北海道新聞社)ほか。
― 新潮選書 『金田一京助』 藤本英夫 (1991年) の著者略歴より ―

※藤本氏は、2005年暮れに故人になられたようだ。


Fujimoto_ginnoshizuku_2『銀のしずく降る降るまわりに』
 ― 知里幸恵の生涯 ―
藤本英夫 著  草風館 1991年 2000円(税別)
※ 基版は新潮選書 1973年刊

草風館のサイトより (この本の紹介)
http://www.sofukan.co.jp/books/75.html

知里幸恵さんのことを深く知りたい方に、おすすすめ。



Fujimoto_uepeker_2『知里幸恵 十七歳のウエペケレ』
藤本英夫 著  草風館 2002年 2500円(税別)

草風館のサイトより (この本の紹介)
http://www.sofukan.co.jp/books/128.html

上の本の続編といえる。
知里幸恵については、必要以上に美化したり、まちがった像(イメージ)が伝えられているように思う。

著者の藤本氏も、あとがきでこう書いている。
<(前略) 私が、もう一度、彼女の生涯に挑戦したくなったのは、そのような彼女に対する誤伝、誤った理解を正しておきたかったことと、私自身にもあった、知里幸恵理解の不足を整理したからだった。>


Fujimoto_chiri_mashiho『知里真志保の生涯』
 ― アイヌ学復権の闘い ―
藤本英夫 著  草風館 1994年 2200円(税別)
※ 基版は新潮選書 1982年刊

草風館のサイトより (この本の紹介)
http://www.sofukan.co.jp/books/68.html

知里幸恵の末弟で、アイヌ語学者の知里真志保の伝記。
この人も、差別のなかで、強烈な人生をおくった。
金田一京助の援助で一高(旧制第一高等学校)から東京大学にすすんだが、金田一博士との確執もあったようだ。


Fujimoto_kindaichi『金田一京助』
藤本英夫 著  新潮選書 1991年 971円(税別)

※ 絶版

e-honのサイトより
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000018478003&Action_id=121&Sza_id=F4   

金田一京助の伝記だが、知里幸恵・真志保姉弟との関わりについても、もちろん触れている。
著者は、金田一京助を評して、「これほど天衣無縫で無防備な人はいないのでは」 という。



知里幸恵 『アイヌ神謡集』 に文字として記録されたカムイユカラは、彼女が伯母(金成マツ)や祖母(モナシノウク)など、身のまわりの人たちから伝承したものであったはず。
そのカムイユカラ(神謡)を、いわばオリジナルの姿(謡い)に復元したCDがある。

「アイヌ神謡集」 をうたう
 うた:中本ムツ子  復元:片山龍峯
 草風館 3枚組CD 2003年 3000円(税別)

上にあげたNHKのテレビ番組 「その時歴史が動いた」 で使われていた音源がこれ。

Kamuy_yukar_utau01_2Kamuy_yukar_utau02










【おすすめサイト記事】
美瑛町360日 http://www.biei.info/blog/
「知里幸恵」
http://www.biei.info/blog/?p=390
   

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