【読】読了 「戦艦武蔵」
吉村昭 『戦艦武蔵』 をようやく読了。
この勢いで、『零式戦闘機』 を読んでみようと思う。吉村 昭
『戦艦武蔵』 新潮文庫 438円(税別)
単行本 新潮社 1967年
『零式戦闘機』 新潮文庫 476円(税別)
単行本 新潮社 1968年
『戦艦武蔵』 (新潮文庫) の作者あとがきが、いい。
私も、あの戦争はこういうふうに捉えるべきだと思っている。
<私は、戦争を解明するのには、戦時中に人間たちが示したエネルギーを大胆に直視することからはじめるべきだという考えを抱いていた。 そして、それらのエネルギーが大量の人命と物を浪費したことに、戦争というもの本質があるように思っていた。 戦争は、一部のものがたしかに煽動してひき起したものかも知れないが、戦争を根強く持続させたのは、やはり無数の人間たちであったにちがいない。 あれほど厖大な人命と物を消費した巨大なエネルギーが、終戦後言われているような極く一部のものだけでは到底維持できるものではない。 (後略)>
戦艦大和と同型、同時期につくられたこの巨大な戦艦は、ほとんど戦闘に参加しないまま、1944年(昭和19)10月、フィリピン島沖(レイテ)海戦で撃沈された。
当時、世界最大級の戦艦として、四年以上の歳月をかけて建造された、艦底から艦橋頂上までの高さ50メートル(国会議事堂と同じ高さ)の巨大軍艦である。
この化け物のような軍艦にはある種の魅力があるが、それを造りあげた厖大なエネルギーと、戦闘のためだけに造られたということに思い至ると、いっそ不気味である。
文庫の巻末解説に、磯田光一氏のこんな記述があって、うなずかせる。
吉村昭の、太宰治賞を受賞した出世作 『星への旅』 が、少年たちの集団自殺を描いたものであることに触れたあと――
<『戦艦武蔵』 は、極端ないい方をすれば、一つの巨大な軍艦をめぐる日本人の “集団自殺” の物語である。>
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コメント
私には歴史を分析する力はありませんが、常日頃、戦前、特に昭和初期は日本全体が一種の宗教団体だったのだなと感じます。現在の北朝鮮、小さくとらえればオーム真理教のようなものかもしれません。
この日本を外から見ればいかに脅威と感じたか。
最近、旭川市の旧第七師団の敷地内にある北鎮記念館を訪ねました。東郷平八郎、乃木希典らの写真や書を見ながら、いろいろなことを感じました。零戦の模型もありました。
私は今司馬遼太郎「坂の上の雲」を読み直しています。
吉村昭の作品、私も、もう一度読み直してみたいなと思います。
投稿: 玄柊 | 2008年10月15日 (水) 07時26分
吉村昭は、このような書物を書いているのですか。名前は知っていましたが、読んだことのない作家です。
あの戦争について、知ることは、私達の義務でもあると思います。”集団自殺””一種の宗教集団”確かにそうでした。
私は、いよいよ五味純平の「人間の条件」に取り掛かりました。
***緊急連絡***
本日10月15日夜、10時から、NHK総合テレビで
知里幸恵さん!を、
「そのとき歴史が動いた」が取り上げましたよ。
ご覧になりませんか?
**************
投稿: モネ | 2008年10月15日 (水) 09時36分
吉村昭さんは、強く惹かれる作家です。
戦記ものに関しては、凄惨なので手付かずですが、(それが、戦争なのですが)取材を丁寧に積まれてそのご苦労が偲ばれます。当時は話したがらなかった人たちも、話したりなくても鬼籍に入られた人たちもたくさんいらっしゃるのですよね。
読売新聞に、奥さんの津村節子さんと井の頭公園を散歩されている写真がありましたね。(10/5)
ステキなので切り抜いてあります。
投稿: 麻生 れい | 2008年10月15日 (水) 11時39分
コメントありがとうございます。
まとめて返させていただきます。
>玄柊さん
「坂の上の雲」は、ずいぶん前になんとか読み通しました。
今、読み返してみればきっと新たな発見がありそうですが、とにかく長くて、私にはたいへんでした。
吉村昭という作家には、これまで縁がなかったのですが、どうやら私の肌にあいそうです。
>モネさん
新聞もほとんど見ない生活ですので、この番組のお知らせはとてもありがたいです。
とりあえず、ビデオ録画予約しました。
この時間帯だと、蒲団に入っていることが多いので。
>麻生れいさん
戦記ものといっても、戦闘シーン以外は私たちと同じような人間の営みが描かれていて、おもしろかったですよ。
直接の戦争体験者の声も、そのうち聞けなくなりそうですね。
吉村昭という作家の醒めた視線が、私は好きになりました。
読売新聞、とっていてよかったですね。
井の頭公園かぁ・・・。
投稿: やまおじさん | 2008年10月15日 (水) 20時26分
私も以前に読みました。吉村昭さんは映画「うなぎ」の原作者ということで知り、夢中で読み漁った時期がありました。
醒めた文章が怖いくらいですね。
ところで、先日、今話題の映画「おくりびと」を観てきました。実に感動しました。そして早速原作の青木新門「納棺夫日記」を昨日買ってきてしまいました(~~!
投稿: かめちゃん | 2008年10月16日 (木) 17時18分
>かめちゃん
吉村昭、いいですね。
はまりこんでしまいそうです。
戦記もの以外にも、間宮林蔵や北海道を舞台にした小説も読んでみたいと、すでに入手済みです。
「おくりびと」という映画、かなり評判のようで気にはなります。
投稿: やまおじさん | 2008年10月16日 (木) 21時15分
零式戦闘機 ゼロ戦の関連で思い出した 一式戦闘機「隼」の加藤隼戦闘隊の加藤建夫は東旭川の出身で どうでもいいけど旭中卒業生です
今年三年ぶりで帰旭(旭川の人しか知らないことばだと思う もう四十年以上前 当時新聞なんかで使われていた記憶あり 今も生きているのだろうか)したとき 旭山動物園に初めて行き 帰りに屯田兵の資料館に寄りました 旭川兵村記念館というそうです
http://www.doshin-pukupuku.com/2007/02/2007021855.html
投稿: uji-t父 | 2008年10月18日 (土) 01時18分
>uji-t父さん
今夜は、私にしてはめずらしくまだ起きていて、ブログ記事を書いていました。
いつも、いろいろ教えてくれてありがとう。
北海道に帰っても、なかなかあちこち見ることができず、残念です。
投稿: やまおじさん | 2008年10月18日 (土) 01時24分
書き忘れ
いかにも磯田光一らしい ウィキペディアでみると56歳で亡くなったようだ ということはいまの私の年齢 すごく頭のいい人なんだなという印象
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0131.html
投稿: uji-t父 | 2008年10月18日 (土) 01時27分