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2008年10月31日 (金)

【読】無名の人々の戦争体験

きちんと読みもしないうちから、あれこれとあげつらうのはいけないな、と反省。

Chichi_no_senki『父の戦記』 週刊朝日 編
 朝日文庫 2008.8 700円(税別)

ひとつひとつの手記が、ずっしりと重い。
50編のうち、はじめの11編まで読んだところで、無名の戦士たちの体験の重さに感じるところが多い。

まなじり決して 「戦争の悪」 を非難するよりも、淡々と語られる体験談はこたえる。



■北支(中国北部)、炊事人夫として雇っていた中国人と、捕虜になった日本兵の逸話。
「生きて虜囚の辱めを受けず」 の戦陣訓の教えにしたがって、救出後に手榴弾で自殺した日本兵。
部隊長の 「よく死んでくれた」 という非情なことばに憤慨して、「東洋鬼(トンヤンキー)」 と叫んで出て行った中国人。  ― 戦陣訓は許すことなし (平野正巳 氏) ―

■内モンゴル、共産軍少年兵捕虜の命をなんとか救おうとしながら、反対に、上官命令によって刺殺する役を負わされた陸軍二等兵。  ― 閉ざされた少年の眸 (大越千速 氏) ―

■南支(中国南部)、コレラが大流行した部隊の軍医の体験談。  ― コレラ地帯行軍記 (杉本雄三 氏) ―

■中支(中国中部)、これも中国人俘虜斬殺を命じられて、なんとかその命を救おうとしたが、俘虜は殺されることを察して脱走、その責任を問われた情報将校の話。  ― 暗夜に消えた工作員 (小坂寿亀 氏) ―

■北満(中国東北部)、「挺身奇襲隊」 と呼ばれた特殊部隊(機動三連隊)に所属し、人間気球爆弾の実験に従事、という稀有な体験記。  ― 挺身奇襲隊の風船旅行 (山田敏文 氏) ―

■北支、馬が苦手なのに、輜重兵として馬の世話を命じられ、手のつけられなかった荒馬と、やがて気持ちが通じるようになった二等兵。  ― 「礼栓」とともに (松村楊七郎 氏) ―  ※「礼栓」は馬の名

■東シナ海、輸送船に乗せられ、潜水艦の襲撃を受けて一命をとりとめた体験記。  ― 火柱は海を染めた (下平真市 氏) ―

■南支、中国人老婆一家の家に世話になり、親しくなったものの、最後にそこを去るとき、老婆が大切にしていた牛を殺して略奪する現場にいあわせた兵士。  ― 没法子(メイファーズ)な牛のはなし (田村昌夫 氏) ―
※没法子(メイファーズ)……中国語で表面上は「仕方がない」の意だが、牛を殺された老婆が「メイファーズ」と泣き叫びながら、いつまでも地べたに頭をこすりつけていた。

■満州、兵士ではなかったがソ連兵に捕らわれ、シベリアへ護送される列車から、命からがら脱出した体験記。  ― 護送列車から暁の脱出 (関正信 氏) ―

■北支、吹雪の中を行軍中、中国人の花嫁行列に遭遇した話。  ― 吹雪の中の花嫁行列 (中山正男 氏) ―

■蒙疆(中国北部)、高粱畑で敵部隊に遭遇、タコツボに落ちて一命をとりとめたものの、同じ穴に中国兵も落ちてきて睨みあい、相手が怪我をしていることに気づいて三角巾を渡し、自分は穴から脱出して九死に一生をえたが、後にその中国兵の死体を見た(三角巾をしっかり巻きつけていた)という話。  ―高粱畑で遭った敵 (竹中顕 氏) ―


これまでに読んだ、11の戦記の内容を簡単に書いてみた。

戦場での体験は、当然のことながら、日常生活とはまったく次元のことなる日々の連続である。
ふつうの神経では、たちまち発狂してしまいそうな(現に発狂した兵士もいたという)、過酷な日々のなかでも、人間らしい気持ちを失わなかった兵士もいたのだ。

そのことがわかって、少しだけ救われた気がする。

それにしても、中国大陸での日本軍(旧陸軍)の残虐ぶりには、あらためて驚く。
捕虜を、いとも簡単に殺してしまう。
ひどい戦争犯罪だが、兵士たちは、すすんで残虐行為に加わったわけではなく、上官の命令に従わなければ自らの命が危なかったのだ(軍法会議にかけられて殺されてしまう)。

そんなことも、よくわかる体験記なのだった。

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