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2008年10月26日 (日)

【読】歴史ってなんだろうね (続)

前回、本の紹介だけで終わってしまったので、その続きをすこし。

『二十世紀 日本の戦争』 (文春新書) という五人による討論の本を読んでいる。
明治以後、なぜあれほど戦争をしたのか私などには理解できないことだが、確実に戦争に巻き込まれていった、あるいは、戦争を引き起こしていった、歴史の流れはよくわかる。

どうしようもなかった、と言えば、言える。
後世の人間が思うほど、大きな歴史の流れを止めたり、変えたり、できるものではないのだ。

政治や経済やの動きのほかに、国民大衆の大部分が戦争を望んでいた(支持していた)ようにも思える。
戦況が不利になり、手痛い目にあったのは、ずっと後のことである。
戦争があんな結末になることを予想していた人は、ほとんどいなかったのではないか。

「軍部や指導者の独走に国民がだまされた」 という図式は、あまりにも安直すぎるだろう。
歴史の流れは、それほど単純なものではないのである。


では、二十世紀という戦争の世紀に生きた、ごくふつうの人たちは、どのように暮らしていたのだろうか。

だいぶん前に手に入れ、ずっと本棚にいれっぱなしだったため、すっかり背が日焼けてしまった分厚い本をおもいだした。

とてもユニークな本である。
これだけのデータを集めた労苦に脱帽。


Kateishi_nenpyou_2『昭和・平成 家庭史年表 1926~2000 増補』
 河出書房新社 1997.12発行/2001.4増補改訂発行
 705ページ 4900円(税別)
 下川耿史 家庭総合研究会 編

― まえがき より ―

<昭和の64年間は時間的な長さもさることながら、時代内容が波瀾に富んでいた点でまことにユニークであった。 ごく単純に俯瞰してみても、長い戦争の時代と完膚なきまでの敗戦、そのダメージから立ち直って、経済的に世界一といわれるような社会が一つの時代において実現したのだから、まさに激動といえる。 (中略)
これら昭和という時代の特徴については、すでに多くの人びとが論及しており、年表という形式で発表されたものも少なくない。 しかし、それらはおしなべて政治や経済の動きを中心にしたマクロな社会史であり、家庭生活を中心とした昭和史といえるものではなかった。>

<しかし歴史は日常の蓄積であり、その日常は家庭を基準にして回転している。 とすれば、家庭という視点を抜きにしては生きた歴史は語れないのではないか。>


どのような年表なのか、昭和6年(1931)の項から、ランダムにごく一部を抜粋してみる。
満州事変勃発の年である。

昭和6年(1931) 不況脱出の願いから財テク書が大モテ

衣・食・住

1月 秋田県の調べでは、県下の小学児童17万4,000人中、弁当を持ってこられる者11万7,500人、正午に自宅へ帰って食べられる者や正午までで帰る者2万6,000人。 残る2万8,790人が欠食児童。
2月 東京で建築費、下落。 木造は坪90円から45円に、コンクリート建築は300~400円から120~130円と3分の1以下。 地価が2年前から2割ダウンしたほか諸材料費が大幅ダウンしたため。
この年 報知新聞社が開襟シャツのデザインを懸賞募集。開襟シャツの流行が始まる。/パーマ普及。洋髪(電髪)と呼ばれる。/旭化成が「ベンベルグ」の生産を開始。/はるさめ、日本で製造開始。/納豆ブーム。……

家計・健康・教育
1.4 東京市、極貧者9,000世帯の救済に妊娠調節の実施を計画。
1.16 文部省、全国の学校へ新しい御真影の下賜を始める。
5.10 民間による母の日(第2日曜日)の催し第1号として「母をたたえましょう」街頭行進が東京で行われ、全国に広まる。現在の母の日は昭和23年から。
9.26 愛国婦人会による満州派遣軍への慰問運動盛況、全国から寄せられた慰問袋は120万個。軍人遺族の援助、傷病兵慰問なども行う。
この年 東北・北海道の冷害で農村の不況が深刻化、栄養不良児童続出。山形県のある村では娘457人中、50人が身売り。/学生・生徒(中等学校以上)の左傾思想事件、頂点に(395件、学校処分991人)。/紡績業界での賃金切下げが顕著。……

文化・レジャー
1.10 師範学校・中等学校で、剣術・柔道が必修科目となる。
1月 田河水泡「のらくろ二等兵」が『少年倶楽部』で連載開始。
4.22 東京・上野動物園にシマウマ1頭、初来園。8月にはハナグマ1頭、9月にはマントヒヒ1頭も初来園。
4月 野村胡堂「銭形平次」が『オール読物』で連載開始。
7月 拳闘ファン激増。スター選手の月収は1,000円以上で、帝国・大日本・日本・東洋など拳闘クラブ(ボクシングジム)も10以上、税務署が財源として目をつける。
9月 満州事変が勃発。おもちゃの鉄カブト(アルミニウム製・へら絞り)や発火装置付きの戦争玩具が爆発的に売れる。
9月 『酒は涙か溜息か』(唄・藤山一郎、作詞・高橋掬太郎)が大ヒット。感傷的流行歌の先駆け。
この年 失業楽士のクラリネットを加えた和洋合奏の〝チンドン屋〝が登場。/北陸線の客車に、畳敷きで天井や窓に提灯を飾り、蓄音機や碁・将棋などを備えた「お座敷列車」登場。お座敷列車のはしり。

社会・交通・一般
2月
 デパートから万引きしては東京・浅草の「泥棒市」で売っていた大万引き団が、警視庁に逮捕される。
3.10 戦時色が強まり、静岡市で全国初の防空演習。
5.1 国鉄、小口貨物の運送にコンテナの使用を開始。
8.25 東京・羽田空港が完成。午前7時20分、1番機が大阪へ向けて離陸。
8.30 高島屋、10銭均一ストアを57ヵ所に開設。チェーンストアの始まり。
9.19 満州事変の第一報が臨時ニュースとして放送される。臨時ニュースの第1号。
10月 石川島自動車・東京瓦斯電気・ダット社の3社で国産バスの試作が始まる。/東洋工業(現・マツダ)、初のオート三輪「マツダ号」を発売。482cc、770円。
この年 『週刊朝日』がミスニッポンを募集、山口県徳山市の俵恒子(22歳)が選ばれる。身長159cm、バスト80cm、体重52.5kg。/交通事故で最も多いのは自動車事故1万7,124件、死者147人・負傷者8,890人。第2位は自転車6,205件、死者15人・負傷者4,504人。人力車は34件、負傷者18人。


こんなディテールの総体が、歴史というものなのかもしれない。
読んでいると、時間がたつのを忘れるほどおもしろい。

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