【読】読了 「虜人日記」
これも十日ほどかけて、ようやく読み終えた。
小松真一 『虜人日記』
ちくま学芸文庫 2004年
(カバーから)
太平洋戦争で、日本はなぜ敗れたのか。 本書で説く 「克己心の欠如、反省力なき事、一人よがりで同情心がない事、思想的に徹底したものがなかった事」 など 「敗因21カ条」 は、今もなお、われわれの内部と社会に巣くう。 そして、同じ過ちをくりかえしている。 これらを克服しないかぎり、日本はまた必ず敗れる。 フィリピンのジャングルでの逃亡生活と抑留体験を、常に一貫した視線で、その時、その場所で、見たままのことを記し、戦友の骨壷に隠して持ち帰った一科学者の比類のない貴重な記録。……
先に読んだ、『父の戦記』 (朝日文庫)は、生々しかったけれど、どこか違和感を感じるものがあったというのが、正直なところだ。
その理由が、この 『虜人日記』 文庫版巻末の山本七平の解説を読んで、わかった気がする。
それは、「記憶の風化」 ということだ。
<……太平洋戦争については、すでに多くが語られた。 しかし、体験者の真正の記憶ですらすでに風化し、時には不知不識のうちにであろうが、時代の要請に基づく歪曲すら見られ、その人の"立場""立場"によって、一つのステレオタイプにはめこまれている。……> (本書解説 山本七平)
山本七平も、小松氏と同じように、フィリピンで捕虜体験をしている。
― Wikipedia 山本七平 より ―
1944年5月、第103師団砲兵隊本部付陸軍砲兵見習士官(のち少尉)として門司を出航、ルソン島における戦闘に参加。1945年8月15日、ルソン島北端のアパリで終戦を迎える。同年9月16日、マニラの捕虜収容所に移送される。 1947年、帰国。
<小松真一氏が本書を書かれたのは、オードネール収容所に移された、昭和二十一年の四月ごろかららしい。 従って、その時点以後の記録は、まさに 「その時」「その場」での記録である。 (中略) 雨と汗がにじみ、ぼろぼろになったその軍隊手帳を見ると、その短い記述はまさに、「その時」「その場」である。> (本書解説 山本七平)
そういった意味で、この本は貴重な戦争体験記。
ひさびさに出あった良書である。
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