【読】同時代の伴走者
「同時代」という言葉がすきだ。
いま、この時代をいっしょに生き、同じ時代の空気を呼吸している人たちがいる。
もちろん、身のまわりにいる生活の場の人々がそうだが、本や音楽を通じて 「同時代人」 と感じる人たちもいる。
私は、かってに 「同時代の伴走者」 と呼んでいる。
伴走者という呼び方は、もちろん、私を中心に置いてのことだ。
彼らは彼らで、それぞれの人生を走っているわけだが、私から見れば伴走者である、という意味合いで。
マラソンに例えてもいいし、一万メートルのトラック競技でもいい。
どうしようもなく苦しくなったとき、ふと横を見ると、同じように走っている人ががいるだけで、きっと元気もでてくるというものだ。
五木寛之、吉本隆明、といった大先輩たちは、私よりもはるか先を走っている人たちだが、その後ろ姿ははっきり見える。
あるいは、同じトラックですぐ横にいるのだが、私より何周も先を行っている。
失礼な言い方だが、ゴールに近い人たちだ。
こんなことを書いたのも、きょう、星野道夫にまつわる本と雑誌を手に入れたからだ。
星野さんも、私にとって 「同時代の伴走者」 だった。
ただ、私がきづいたときには、もう彼の姿はどこにも見えなくなっていたのだが。Coyote No.16
「特集 トーテムポールを立てる」
2007年4月 スイッチ・パブリッシング
857円(税別)
星野さんが生前、親しくしていたボブ・サムの語り 「森と氷河と鯨よ、ミチオと≪ひとつ≫になれ」、池澤夏樹さんの講演 「もう一つの時間 星野道夫の生涯」 などが収録されている。
なによりも、この雑誌は写真がきれいだ。『終わりのない旅 星野道夫インタヴュー』
― 原野に生命の川が流れる ―
湯川 豊 スイッチ・パブリッシング
2006年 1500円(税別)
この本は、だいぶん前に図書館から借りて読んでいるが、あらためて手許に置いておきたくなって購入した。
【読】星野道夫さんとクマ(続々) 2008年6月22日 (日)
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_9893.html
<僕は生物学者でも人類学者でもなくて、ごくふつうの人間が誰でももつような思いがあって、それはいってみれば、どうして人間はここにいるのか、そしてどういう方向に行こうとしているか、ということだと思うんです。 人間という種の不思議さ。 自分が生きてることの不思議さっていうのかな。 そんな意識がいつもどこかにあるような気がします。 そういう意識でアラスカを撮っていると何かが見えてくる。> (本書帯 ―「終わりのない旅 星野道夫インタヴュー」より)
生きていると、つらいことも多い。
楽しいこともあるが、悲しくなること、さびしくてたまらないこともある。
それでも、まだまだ走りつづけなければいけない。
星野道夫さんが残した文章や写真が、そっと励ましてくれることは、うれしい。
もうこの世にいない人だけれど、まだ生きている。
そういう人だ。
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コメント
星野さんが亡くなっていつの間にか10年以上が過ぎました。しかし、彼の存在は亡くなってますますその意味を深めています。北海道に住み、雪に寒さにつらいなと思った時、彼を思い出します。
つい最近、否応なく旭山動物園へ行きました。我々はこのようにして野生動物と接するしかありませんが、檻に入れられた彼等はもう存在価値を失っていました。彼らの自由を奪ってまで彼らを檻へ閉じ込める人間の愚かさをどのように克服していけばいいのか・・。
灯油を、ガソリンを使い続けている自分をも含めて、星野さんの本を再読してもう一度考え直してみます。
投稿: 玄柊 | 2009年1月29日 (木) 21時18分
>玄柊さん
私が星野道夫さんの存在を知ったのは、亡くなる数年前でした。たまたま目にした写真集で、その写真のもつちからに圧倒されました。
それは、高尾の奥(ラブホテル街)にある、ほうとう料理の店でした。
あの時の印象は、いまでもよく憶えています。
動物園、私はもう何年も、何十年も行っていません。
アラスカに行ってみたいとは思いますが。
投稿: やまおじさん | 2009年1月29日 (木) 21時49分