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2009年1月17日 (土)

【読】水木しげる「ラバウル戦記」がおもしろい

読み始めると異常におもしろいので、夢中になって読んでいる。

Mizuki_rabaul水木しげる 『水木しげるのラバウル戦記』
 ちくま文庫 1997年 950円(税別) 235ページ
 親本 筑摩書房刊 1994年

まえがき(はじめに)によると、この戦記は三つの部分から構成されている。
1.昭和24年から26年頃に、発表するあてもなく描いた『ラバウル戦記』
2.昭和60年に出した『娘に語るお父さんの戦記・絵本版』(河出書房新社)のために書いた絵
3.終戦と同時に移動させられたトーマという所で描いたスケッチ
 (わら半紙に、鉛筆と慰問袋の中にあったクレヨンを使って描いた)

トーマの場所は、地図で探してみたがわからなかった。
ラバウルのあるニューブリテン島のどこかだろうか。

 ※2009/1/17追記
  トーマ(Toma)は、ラバウル(Rabaul)のすぐ南にあった。
  Wikipedeiaで「ラバウル」の項を見ると、英語版の地図が掲載されていた。
  さらに、こんなサイトもあった。
   PIC 国際機関太平洋諸島センター>
   パプア・ニューギニア―ニューブリテン島とニューアイルランド島
   http://www.pic.or.jp/tourism/png/4.htm


この本には地図が載っていないので、地理的な位置関係がよくわからない。
水木さんの関心は、もっぱら軍隊での日常生活にあったようだ。


昭和18年11月頃というから、今から思えば戦争の末期、日本の敗戦色が濃くなっていた時期。

<鳴らないラッパを毎日ふかされるのに困った水木二等兵は、人事係の曹長に「やめさせてくれ」と直訴。/「南方がいいか北方がいいか」といわれて「南方です」といって、南方行きと相成った……>  (本書P.8 「内地よりラバウルへ出発」)

彼は、初年兵だったので(当時二十歳ぐらい)、古兵から毎日いじめにあう。
「いじめ」とはちがうのかもしれないが、旧日本軍、とくに陸軍で日常的にやられていた、ビンタ攻撃である。

Mizuki_rabaul_2_3<毎日、山に登っては、穴を掘るのだ。しかもなまけられない。ぼくは要注意人物だったらしく、ちょっと腰かけただけで古兵たちにののしられるのだ。/それをよいことに、日頃からなぐりたがっている上等兵が、「メガネをはずせ」とくる。そして、なにも悪いことしたおぼえがないのに、ビンダ十発!>

<まあ、ぼくに忍耐ということを教えてくれたものがあるとすれば、この古兵たちだろう。どんな理不尽なことをされても、だまっていなければいけないのだ。>

<それが毎日なのだからたいてい敵よりもこの古兵にやられてしまう。むしろ敵の方がアッサリしていていい感じだと、初年兵同士で話し合ったものだ。初年兵はすべて〝ノイローゼ〟気味だった。>  (本書P.80 「ラバウル戦記 その二」)


水木二等兵は、ビンタをいちばんたくさんもらったにもかかわらず、もって生まれた楽天性からなのか、あっけらかんとしている。

自分でも胃が丈夫だったと書いているように、ノイローゼになったり、体をこわしたりすることもなく、南方の風景に感動したりする精神的な余裕をもっていたようだ。

<とにかく、ラバウルにはぼくらのあと誰も日本内地から上陸してこないから、〝永遠の初年兵〟になるわけだ。即ち、何年たっても階級が一番下だから常に初年兵なのだ。>

<軍隊というところは、どうしたわけか、めしだけは平等だったから、胃が人よりもいいぼくは満足だった。>

<平地と違って山は景色もよく、鳥なんかもいた(いずれも日本にいない鳥ばかり)。>  (本書P.80 「ラバウル戦記 その二」)


この戦記は、ちっとも暗い感じがしない。
いい本に出会ったと思う。

 

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コメント

わたし、中1の頃から、水木さんのファンでして・・・。おかげで、ずいぶん、救われて来たのです。昔、蘆花公園に住んでいた頃、水木さんに逢いたくて、ふらふら調布駅までいったものでした。でも、変な女の子が訪ねていっても迷惑だろうなあと流石に分別できまして、駅前の書店でマンガを立ち読みして帰りました。
 こんなにメジャーになるとは・・・。「猫忍」とか「神変方丈記」がすきです。うちのだんなさまは「白い旗」がいちばん良いと言うてます。わたしはエッセイも大好きで、ちょっと変わった人たちの話に惹かれました。無銭飲食しながら放浪している画家の話とか、とても憧れ、あちこち放浪したいなあと思っていたのですよ。NHkの朝の連ドラ「ゲゲゲの女房」を、なんとなく時間が合うときは見ています。

投稿: みやこ | 2010年4月 3日 (土) 22時11分

>みやこさん
そうでしたか、中学1年の頃から…。
私は熱心な読者ではありませんが、南方熊楠を描いた『猫楠』が面白かった。
水木夫妻をテレビ番組でみたことがあります。
「ゲゲゲの女房」は興味がありますが、あまりテレビをみない生活なので、残念なことにまだ。

投稿: やまおじさん | 2010年4月 3日 (土) 22時20分

「猫楠」は猫の表情がなんともいえず楽しいですね。南方熊楠にも、二十歳過ぎのころから随分と救われてきたものです。「履歴書」に、なんといっても惹かれましたねえ。孫文との交友やメキシコでサーカスに一時入って糊口を凌いだこと、柳田國男が訪ねてきたとき布団の中から出なかったこと、などなど印象あざやかです。天才と狂気は本当に紙一重だなあと思わせられます。水木しげると南方熊楠、天才どうし相通ずるのでしょうね。水木さんの側からすると、とてつもなく親しく思われるのだろうと・・・。

投稿: みやこ | 2010年4月 3日 (土) 23時08分

>みやこさん
私が熊楠という人を知ったのは数年前ですが、たしかに「紙一重」の偉人ですね。
水木さんが熊楠を描いていることが不思議だったのですが、なるほど「相通じる」ものがあるのかも。

投稿: やまおじさん | 2010年4月 4日 (日) 06時53分

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